2019年6月9日に投開票が行われた堺市長選挙は、大阪維新の会の新人で元府議会議員の永藤英機氏が、激しい選挙戦の末、見事当選を果たしました。しかし、今回の選挙戦で注目すべきは、永藤氏に肉薄した無所属新人の元市議、野村友昭氏の善戦でしょう。最終的には永藤氏が勝利を収めましたが、反「大阪都構想」を掲げた野村氏は、投票総数約27万5千票のうち、実に44パーセントにあたる12万3千票を獲得。その差はわずか1万4千票という、まさに息詰まる大接戦となったのです。
野村氏を支援した陣営内では、惜敗の悔しさをにじませながらも、「堺市民が、維新が推し進める都構想に反対の意思を明確に示したという事実は非常に意義深い」との見解を示しています。野村氏が、大阪維新が掲げる大阪都構想、すなわち、大阪市を廃止して複数の特別区に再編する構想への住民投票容認の方針を打ち出した自民党大阪府連に反発し、無所属での立候補に踏み切った経緯からも、この争点が選挙戦に大きな影響を与えたことは間違いありません。
野村氏自身も、出馬が直前になったことによる「準備不足」を敗因の一つとして挙げています。「都構想は非常に影響力の大きい制度であるにもかかわらず、その全容を市民に伝えるための時間が足りませんでした」と、選挙戦の難しさを振り返っています。また、野村氏を支えた自民党の岡下昌平衆院議員は、前市長の辞職に伴う出直し選挙という特殊な状況下、自民党が前市長を支持していたという背景から、「今回はマイナスからのスタートだった」と述懐しています。当初は、大差での敗北も予想されていた中で、ここまで永藤氏に迫れたことは「驚きだ」とし、今後も都構想反対の立場は堅持する考えを強調しました。
一方、今回の選挙結果について、自民党大阪府連の渡嘉敷奈緒美会長は、6月9日夜の記者会見で、野村氏陣営が、国政で対立する共産党との連携が見られたことが敗因につながったと分析しました。この結果を受け、渡嘉敷会長は、都構想に関する自民党の今後のスタンスについて、近日中に態度を明確にする意向を示しています。具体的には、6月21日に再開が予定されている法定協議会(法定協、都構想の制度設計を議論する場)までに、「共産党とは立ち位置を変え、改めて住民投票に賛成する立場を明確にする」と発言しました。これは、自民党大阪府連が、これまでの慎重姿勢から一転し、都構想の推進に向けた動きを加速させることを示唆しており、今後の政局の大きな転換点となりそうです。
SNSでの反響と「都構想」が持つ意味
今回の堺市長選の結果は、SNS上でも大きな反響を呼びました。特に、「都構想」を巡る議論は白熱しており、「維新が勝ったことで、住民投票が現実味を帯びてきた」という意見や、「野村氏がこれだけ票を集めたのは、都構想への懸念が市民の中に根強くある証拠だ」といった、賛否両論の声が飛び交っています。この選挙戦は、大阪府域における「都構想」の是非を問う予行演習としての側面も持ち合わせており、有権者の関心の高さがうかがえます。
大阪都構想とは、大阪府と大阪市が取り組む広域行政の一元化を目指す動きであり、大阪市を廃止し、新たに複数の特別区を設置する、というものです。これにより、二重行政の解消や、効率的な都市運営が実現できると推進派は主張しています。しかし、その一方で、特別区になることで行政サービスが低下するのではないか、という懸念も根強く存在しており、今回の選挙結果は、この複雑な問題に対する市民の意識を色濃く反映していると言えるでしょう。一編集者としての私見ですが、住民投票の実施がより現実的となる中で、市民に対して、メリットだけでなくデメリットも含めた都構想の「すべて」を、より分かりやすく、かつ公平に提示するメディアの役割は一層重要になってくると思われます。