日の出前の早朝5時、インドのデリー空港。ここで颯爽と業務に向かう一人の女性がいます。新興航空会社ビスタラ航空でパイロットを務めるネーハ・チャウダリーさん(35)です。彼女は午前中のフライトをこなし、午後は家族との時間を大切にするという、充実したワークライフバランスを実現しています。
「空を飛ぶのは楽しく、収入も良い」と語る彼女の姿は、これまでのインドのイメージを大きく覆すものでしょう。実は今、カースト制度などの古い慣習が残り、女性の労働参加率がわずか2割程度とされるインドにおいて、女性パイロットの割合が急増しているのです。
世界の常識を覆す、アジア各国の驚くべき数値
驚くべきデータがあります。インドにおける女性パイロットの比率は12%に達しており、これは世界平均の5%を大きく上回る数字です。航空需要が4年で倍増するという急成長の中、各社は深夜勤務の送迎に護衛をつけるなど、女性が働きやすい環境整備に必死になって取り組んでいます。
アジアといえば、長らく男性中心の「父権社会(家長である父親や男性が支配的な権力を持つ社会構造)」が根付いている地域という印象が強いかもしれません。しかし、国や地域によっては、先進国をも凌駕する女性活躍の事例が次々と生まれているのが、2019年6月13日現在の実情なのです。
「働くのが当たり前」なベトナムと、「女性上司」が普通のフィリピン
視点をベトナムに移してみましょう。ハノイで働くチャン・ティ・キム・ズンさん(33)は、「働くのは当たり前。母も姉も仕事を持っている」と語ります。国際通貨基金(IMF)の2016年の調査によれば、ベトナム女性の労働参加率は72%。これはアジアのみならず、福祉国家として名高いスウェーデンの70%さえも上回る世界トップクラスの水準です。
この背景には、ベトナム戦争により男性人口が激減した際、女性が社会を支えたという歴史的経緯や、親子で家事育児を補い合う大家族制度の存在があるようです。
一方、管理職における女性比率で際立つのがフィリピンです。国際労働機関(ILO)によると、同国の女性管理職比率は52%。なんと日本の12%と比較して4倍以上という圧倒的な差をつけています。大手銀行BDOユニバンクのアミー・ゴチャンセさん(44)のように、チームを率いることに大きなやりがいを感じている女性リーダーが数多く活躍しているのです。
500兆円の潜在能力と、私たちが直面する課題
SNS上では、こうしたアジアの躍進に対し「日本は完全に置いていかれている」「アジアの女性はパワフルで尊敬する」といった驚きの声や、「制度だけでなく、家族のサポート体制が羨ましい」といった切実な意見が多く見受けられます。まさに私たちは、アジアの隣人たちの変化から多くを学ばなければなりません。
米コンサルティング大手マッキンゼー・アンド・カンパニーの試算によると、アジア太平洋地域でジェンダー平等が進めば、2025年までに経済規模が12%、金額にして約4兆5千億ドル(約500兆円)も増加するといいます。
私自身、この記事を編集しながら痛感するのは、女性活躍とは単なる「公平性」の話ではなく、経済成長に直結する「国家戦略」であるという事実です。もちろん、OECD(経済協力開発機構)の専門家が指摘するように、旧来の慣習という壁は依然として厚いでしょう。しかし、眠っていた女性の力を引き出せるかどうかが、今後のアジア、ひいては日本の成長を持続させる鍵になることは間違いありません。