自動車業界にまたしても激震が走りました。フランスの自動車大手ルノーは、現地時間の2019年6月12日午後、パリにて定時株主総会を開催しました。この場で、ジャンドミニク・スナール会長が提携先である日産自動車のガバナンス改革(企業統治の刷新)案に対して、公然と不満を表明したのです。これまでの融和的なムードから一転、両社の間に再び緊張が走る事態となっています。
スナール会長は、日産が新たに設置を予定している「指名委員会」などの監督機関について、「ルノーのティエリー・ボロレCEO(最高経営責任者)らを委員として加えるべきだ」と強く主張しました。これは実質的に、日産の経営中枢にルノーの影響力を残したいという意思表示にほかなりません。口では「日産に戦いを挑むわけではなく、対話をしたい」と述べていますが、株主総会という公の場での発言だけに、日産側への強烈なプレッシャーとなることは間違いないでしょう。
そもそも、カルロス・ゴーン被告の逮捕以降、ルノーと日産の関係は揺れ動いてきました。スナール氏が会長に就任した2019年1月頃には歩み寄りの姿勢も見られましたが、ここへ来て再び雲行きが怪しくなっています。特に4月以降は経営統合の議論や、今回の日産株主総会での議案を巡って、水面下での駆け引きが激化していたようです。スナール氏は「ゴーン被告の事件でアライアンス(企業連合)が傷ついた」と認めつつ、関係修復が最優先事項だとしていますが、その手法には強引さが透けて見えます。
FCAとの統合交渉、そしてゴーン氏への報酬問題
また、今回の総会では、先日破談となった欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)との経営統合交渉についても言及がありました。スナール会長は「非常に落胆している」と悔しさを滲ませつつ、その原因としてルノーの筆頭株主であるフランス政府との「考え方の違い」を挙げました。政府の介入が交渉の足かせになったことを示唆した形です。
興味深いのは、スナール氏がFCAとのプロジェクトを「素晴らしいものとして頭の中に残り続ける」と語り、将来的な交渉再開の可能性を匂わせた点です。日産との関係がぎくしゃくする中で、ルノーとしては新たなパートナーシップの可能性も捨てきれないという焦りがあるのかもしれません。FCAとの統合が実現すれば、ルノーの影響力が増し、日産との力関係にも変化が生じるため、今後の動向から目が離せません。
一方で、ゴーン前会長に対する2018年の成果連動報酬、約22万4000ユーロ(約2700万円)の支払いについては、株主の88.66%という圧倒的多数の反対で否決されました。これには会場からも納得の声が多く聞かれたようです。巨額の報酬を得ていたカリスマ経営者の失墜に対し、株主たちの目は極めて厳しいものになっています。
SNSでの反響と編集部の視点
このニュースに対し、SNS上では様々な反応が飛び交っています。「ルノーは日産を支配下に置きたいだけではないか」「対話と言いつつ、人事介入するのは矛盾している」「ゴーン氏の報酬否決は当然の結果だ」といった、ルノー側の姿勢に懐疑的な声が目立ちます。また、「日産は毅然とした態度で独立性を守ってほしい」という応援のコメントも散見され、日本のユーザーが高い関心を寄せていることが分かります。
私自身、今回のスナール会長の発言には強い危機感を覚えます。「対話」という言葉の裏で、日産のガバナンス改革に注文をつける姿勢は、相互信頼に基づいたパートナーシップとは言い難いのではないでしょうか。ルノー自身の業績やFCAとの交渉失敗という焦りが、日産への強硬姿勢に繋がっているようにも見受けられます。
日産が目指す「委員会設置会社」への移行は、経営の透明性を高めるための重要なステップです。そこに特定の株主であるルノーの意向が過度に反映されれば、改革の骨抜きにもなりかねません。2019年6月現在、両社の攻防は最終局面を迎えていますが、日産には是々非々の議論を通じて、真に自立したガバナンスを確立してほしいと願ってやみません。