任天堂が挑む「サブスク」の波!ソニーやGAFA包囲網に対抗するビジネスモデル転換の行方

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2019年06月11日、米国ロサンゼルスで世界最大級のゲーム見本市「E3」が開幕しました。世界中のゲームファンが熱狂する中、任天堂ブースも大きな盛り上がりを見せています。テキサス州から訪れたマット・パタキーさん(32)が「朝一番に走った」と語るほど、その求心力は健在です。しかし今、任天堂はその輝かしいハードウェア販売の裏側で、静かなる、しかし極めて重要な「ビジネスモデルの転換」を迫られています。

これまでの任天堂といえば、ニンテンドースイッチのような「ゲーム機本体」と「ソフト」を売り切ることで利益を上げてきました。2020年03月期のスイッチ販売目標は1800万台、連結売上高は1兆2500億円を見込むなど、数字だけを見れば絶好調に見えます。しかし、この「売り切り型」には大きな弱点があるのです。それは、ヒット作が出るか出ないかで業績が天国と地獄を行き来する、非常に不安定な収益構造であるという点です。

サブスクリプションという新たな潮流

そこで注目されているのが、「サブスクリプション(継続課金)」というモデルです。これは、商品を買い取るのではなく、月額や年額といった定額料金を支払うことで、一定期間サービスを利用できる仕組みのことを指します。動画配信のNetflixや音楽のSpotifyなどが有名ですが、ゲーム業界にもこの波が押し寄せているのです。ライバルのソニーは、すでにこの分野で大きな成功を収めています。

ソニーの有料会員サービスは、2019年03月末時点で3640万人もの会員を抱え、年間約3300億円もの売上を叩き出しています。これはゲーム関連事業の約14%を占める規模であり、ヒット作の有無にかかわらず毎月安定した現金が入ってくる「金のなる木」となっているのです。一方、任天堂がスイッチ向けの有料オンラインサービスを開始したのは、ソニーから遅れること8年、2018年09月のことでした。

「任天堂らしさ」と変革の狭間で

なぜ任天堂はこれほど出遅れたのでしょうか。そこには「子供たちが安心して遊べるゲーム機」という、同社独自の哲学がありました。宮本茂代表取締役が「買い切り型が定着すれば安心してゲームが作れる」と語っていたように、追加課金のないシンプルな形こそが任天堂らしさだったのです。しかし、2019年04月時点で会員数は980万人と順調に増えており、古川俊太郎社長も「運営型のビジネスに育てたい」と意気込みを見せています。

インターネット上のSNSでは、この変化に対して様々な声が上がっています。「月額課金は抵抗があるけど、オンライン対戦には必須だから仕方ない」「懐かしいゲームが遊び放題になるなら安いものだ」「任天堂には課金ゲーにはなってほしくない」といった、期待と不安が入り混じった反響が見受けられます。ユーザーにとっても、従来の「ソフトを買う」スタイルからの意識変革が求められている時期なのかもしれません。

GAFA参入による競争激化と今後の展望

私自身、一人のゲームファンであり編集者としてこの状況を俯瞰すると、任天堂の舵切りは「遅すぎた」とは思いません。むしろ、強固な経営体力がある「今」こそが、変革のベストタイミングだと感じます。なぜなら、今秋には米アップルが定額遊び放題サービスへの参入を予定しており、マイクロソフトもサービスを拡充しているからです。巨大IT企業「GAFA」が本気でゲーム市場を取りに来ている現在、旧来の売り切りモデルだけに固執するのはリスクが高すぎます。

「ゲームでも定額使い放題の流れは止めようがない」と専門家が指摘するように、時代は確実にシフトしています。任天堂が持つマリオやゼルダといった強力なキャラクターIP(知的財産)は、サブスクリプションモデルでも最強の武器になるはずです。古き良き「任天堂らしさ」を守りつつ、安定した収益基盤を確立できるか。2019年は、老舗メーカーの真価が問われる勝負の年になるでしょう。

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