【2019年】米中対立と環境規制が変える!銅製品輸入減でも「銅鉱石」が増える中国非鉄金属市場の構造変化を徹底解説

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世界経済の動向を敏感に反映するといわれる非鉄金属、銅(あかがね)。その国際的な価格変動とともに、世界最大の銅消費国である中国の輸入統計は、常に市場の注目を集めています。2019年6月13日付けの記事が報じたところによると、中国の銅製品の輸入量は2018年後半から減少傾向に転じており、これは景気減速の兆候を裏付けるものと見られていました。しかし、この裏側で、銅製品の原料となる銅鉱石(どうこうせき)の輸入が大幅に増加するという、極めて興味深い輸入構造の変化が起こっているのです。

中国は世界の銅需要のおよそ5割を占める、まさに「大消費国」です。これまで自国生産だけでは賄いきれない需要を満たすため、自動車や家電、スマートフォンなどの部品に使用する銅製品を海外から輸入するほか、日本や欧米から銅スクラップ(銅を回収して再利用できるようにしたもの)を買い付け、リサイクルして利用してきました。しかし、この長年の輸入スタイルに、大きな転機が訪れています。中国税関総署のデータによれば、2019年1月から4月までの累計の銅製品輸入量は約15万トンとなり、前年同期と比べて16%も減少しています。これは、主に建材用の電線や製造業の部品に使われる銅製品の需要が、米中貿易摩擦の影響を受け、伸び悩むどころか減少に転じたためだと考えられます。

特に、中国国内の2018年の新車販売台数が28年ぶりに前年実績を下回ったことは、自動車メーカーにおける部品調達の削減につながり、銅製品の需要減を加速させました。また、アメリカが「第4弾」の対中制裁関税としてスマートフォンなどのハイテク製品に関税引き上げを計画している状況も、銅需要のさらなる減少懸念を強めていました。実際、ロンドン金属取引所(LME)の銅3カ月先物価格は2019年6月7日に1トンあたり5,799ドルという、約5カ月ぶりの安値を記録しており、市場の不安感が浮き彫りになっていたのです。当時のSNSでは「世界の工場である中国の景気はかなり厳しい」「関税の影響が製造業のサプライチェーンに直撃している」といった悲観的な見方が多く投稿されていました。

環境規制と地政学リスクがもたらす構造変革

それでは、銅製品の需要が落ち込む中で、なぜ原料である銅鉱石の輸入が増えているのでしょうか。2019年1月から4月までの鉱石・精鉱の累計輸入量は726万トンと、前年同期比で17%もの増加を見せています。その理由の一つが、中国政府が2017年から進めてきた環境規制の強化です。環境対策の一環として、非鉄金属スクラップなどの輸入が段階的に制限されてきました。特に、廃プラスチックなどが多く混ざり、銅の含有率が低い**「雑線(ざつせん)」スクラップの輸入は2018年12月末で禁止され、これに伴い銅廃棄物・スクラップの輸入量は同年1月から4月で前年同期比30%減の51万トンにまで落ち込みました。

非鉄金属商社である三報物産の山口寿社長が指摘するとおり、スクラップの調達が困難になった中国の非鉄メーカーは、その代替として原料となる銅鉱石の調達を増やしているのです。さらに、中国政府は2019年7月からは、品位(含有率)が高い銅スクラップについても輸入を許可制にする方針でしたから、スクラップの輸入量は今後さらに厳しく制限されると見られていました。この環境規制は、不純物が多く、環境負荷の高いスクラップ処理に頼るのではなく、よりクリーンな鉱石からの精錬へと、中国の産業構造を意図的に転換させようとする、非常に強い決意の現れだと私は考えます。

もう一つの大きな要因は、ハイテク分野を主戦場とする米国との対立、つまり地政学的なリスクの高まりです。当時、米商務省は安全保障上の理由から、中国の通信機器最大手である華為技術(ファーウェイ)に対する米国製品の輸出を事実上禁止しました。この動きは、世界中の企業に部品提供の停止という波紋を広げ、中国にとって海外からの電子部品などの調達が滞る、サプライチェーンの寸断に直結しかねない事態を招いていたのです。みずほ銀行デリバティブ営業部の能見真行調査役の分析では、今後は中国国内で原料から部品を一貫してつくる「内製化」**の商流へと大きくシフトする公算が大きいと予測されていました。

これは、完成した銅製品やスクラップを輸入するよりも、原料である鉱石から部品となる銅製品を一貫生産することで、有事の際にも安定した調達を目指そうとする中国の戦略的な姿勢を反映しているといえるでしょう。環境問題への対応に加え、米中対立や景気減速という複合的なリスクに直面する「世界の工場」中国。非鉄金属の輸入構造に現れたこの「変調」は、同国が自給自足とサプライチェーンの強靭化へと舵を切っていることを、静かに、しかし雄弁に物語っていると考えられます。

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