2019年6月14日、日本のコンビニエンスストアのトップランナーであるセブン-イレブン・ジャパンが、大きな転換期を迎えている現状を明らかにしました。特に深刻化する「24時間営業」の問題について、永松文彦社長は日本経済新聞社の取材に対し、加盟店である「フランチャイズチェーン(FC)オーナーに判断を委ねる」という、これまでの本部主導の姿勢を大きく変える方針を打ち出しています。社会と消費者の行動が変化する中で、従来のビジネスモデルを見直し、いかに持続的な成長を遂げるかが、今、問われていると言えるでしょう。
この背景には、深刻な人手不足に伴う人件費の高騰と、食品ロスによる廃棄損がFC加盟店の収益を強く圧迫している現状があります。実際に、今年2月には大阪府東大阪市の加盟店オーナーが独自に営業時間を短縮し、これが24時間営業に関する議論を全国的な問題へと発展させるきっかけとなりました。経済産業省もこの状況を重く見て、コンビニ大手各社に対し、人手不足などの是正に向けた行動計画の策定を要請するに至り、各社が4月に対応策を発表しています。
セブン-イレブンが現在進めている営業時間短縮の実証実験には、すでに約40店のFC加盟店が参加し、さらに約200店が参加を希望している状況です。実験期間はまず3カ月間(最長6カ月間)で、永松社長は、このテストを通じて「売り上げや利益への影響、店舗運営作業の検証に入る」と述べており、結果を今後の経営指導の貴重な材料として活用する考えです。また、公正取引委員会は、加盟店からの見直し要請を本部が不当に拒否した場合、「独占禁止法違反の可能性は排除できない」との見解を示しており、本部の姿勢転換は、こうした外的要因も強く影響していると考えられます。オーナーの自主的な判断を尊重する方針は、健全なFC関係を築く上で極めて重要です。
加盟店支援の取り組みは、営業時間見直しに留まりません。セブン-イレブンは、2020年2月期の新規出店数を150店と、約40年ぶりの低水準に抑制する方針も示しました。店舗の純増を抑えることで、既存店の収益改善に注力する姿勢が伺えます。さらに、既存店へのサポート体制を強化するため、店舗運営を担う「オペレーション本部」の人員を6月24日付で百数十人規模で増員することも発表されました。これは新店舗開発部署からの配置転換によって現状より6%の増員となり、現場支援への本気度が伝わってきます。
収益改善策のもう一つの柱として、食品ロス削減に直結するポイント還元策が打ち出されています。これは、販売期限が近づいた食品を購入した利用者に対し、電子マネー「nanaco(ナナコ)」のポイントを還元するという、実質的な値引き販売を検討するものです。食品が売れ残って廃棄される場合、その損失の85%は加盟店が負うことになっており、この負担軽減は切実な問題でした。永松社長は、このポイント還元を「9月に始められるよう準備している」と明かしており、還元率は実験段階で100円につき3~5ポイントですが、将来的には10ポイントも視野に入れているとのことです。
セブン-イレブンを展開するセブン&アイ・ホールディングス(HD)は、グループ全体で2030年までに食品廃棄を半減させる目標を掲げています。このポイント還元策は「本部による販売促進策として食品廃棄減につなげる」という位置づけであり、SDGs(持続可能な開発目標)が叫ばれる現代において、環境への配慮と経営改善を両立させる、非常に意義深い取り組みだと言えるでしょう。この動きは、SNS上でも「加盟店が報われるべき」「ようやく時代に合った対応になった」といった、前向きな反響を多く集めており、消費者からも歓迎される傾向にあります。
一方で、本部側も加盟店支援の原資を捻出するため、コスト削減に動きます。年間で約500人採用している新卒・中途採用について、永松社長は「IT(情報技術)化などで生産性を高められれば、採用はある程度絞ることができると考えている」と述べ、採用抑制を視野に入れていることを示唆しました。国内のコンビニ店舗数は約5万8千店に達し、市場の飽和が指摘されて久しいです。一店舗あたりの売上高や客数が伸び悩む中、人件費の上昇が直撃する状況は、まさにビジネスモデルの変革を迫っています。
永松社長は、自らが4月に就任したばかりということもあり、「ビジネスモデルを変え続け、過去のやり方の踏襲は打破していくのが自身の役割だ」と、強い決意を表明しています。単に店舗数を増やして成長する時代は終わり、これからは「潜在的なニーズを見つけていくことが重要だ」と強調しました。例えば、いれたてのコーヒーをコンビニで買うという新しい消費行動を根付かせた「セブンカフェ」のように、既成概念を捨てて新たな需要を開拓する発想こそが、今後のコンビニ経営の鍵を握るでしょう。この大転換期において、セブン-イレブンがどのような未来を描くのか、その動きから目を離すことはできません。