地方銀行の「越境融資」が3割超え!激化する金利競争と生き残り戦略の行方【日銀調査】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

2019年6月14日に日本銀行(日銀)が公表した調査結果は、地方銀行(地銀)を取り巻く厳しい経営環境を浮き彫りにしています。全国に約100行存在する地銀が、本店所在地以外の都道府県へ融資を行う「越境貸出」の割合が、2017年度には全体の31.8%にまで増加しました。これは、2003年度の25.2%と比較して6.6ポイントもの大幅な上昇です。この動きは、人口減少が続く地方経済という限られた市場で、地銀が収益を確保するための苦渋の選択と言えるでしょう。

特に注目すべきは、融資の増加が近隣地域で顕著になっている点です。大規模な金融緩和が始まった2013年度と比較すると、都内(東京都内)向けの融資比率の増加が0.2ポイントにとどまる一方で、近隣地域を含む県外向けの比率は1.2ポイントも伸びています。これは、金利の引き下げ競争が激しい東京都を避け、地理的に近い周辺地域へと融資先を求めている傾向の表れで、地銀が「限られたパイ」を奪い合う消耗戦の様相を呈していると言えるでしょう。

この越境貸出の増加は、金利の低下圧力を高める主要因となっています。日銀の調査によると、2017年度の本店所在地における平均融資金利は1.31%で、2014年度から0.24%低下しました。県外向けの金利はさらに低く1.07%となっており、こちらも0.21%の低下が見られます。融資競争が激化し、地域をまたいで金利水準が近づく現象は、収斂(しゅうれん)化の方向で金利低下が進んでいる可能性が高い、と日銀のリポートは分析しています。金利が低下すれば、地銀の主な収益源である利息収入が減少し、経営を圧迫する要因になりかねません。

SNS上では、この日銀の発表に対し、「地銀の金利競争は限界ではないか」「低金利政策が長期化する中、地方経済の冷え込みと相まって、地銀の生き残り策が問われている」といった懸念の声が多く見受けられました。また、中には「越境融資が増えても利息収入が増えていないなら、単なる体力の消耗でしかない」と、地銀の経営戦略に対する厳しい指摘も見られました。利用者としては低金利の恩恵を享受できるかもしれませんが、地域経済の担い手である地銀の体力低下は、将来的に私たち利用者へのサービス低下につながる可能性もございます。私は、この状況を「地方経済の構造的な問題」が金融機関の経営にまで波及している深刻なサインだと捉えています。

「金利競争」から「付加価値の提供」へ!日銀が示す地銀の活路

越境貸出が増加しても利息収入の増加につながっていない現状に対し、日銀は地銀に対して警鐘を鳴らし、抜本的な対応策の重要性を提起しています。具体的には、次の3つのポイントが挙げられました。(1)リスクに見合った金利設定による採算性の確保、(2)与信管理(よしんかんり)の強化、(3)非金利面での付加価値の充実など取引先との関係構築、です。

与信管理とは、銀行が融資先の信用力や返済能力を正確に評価し、貸し倒れなどのリスクを適切に管理することですが、金利下げ競争に走ることで、この管理が甘くなることは避けたいでしょう。また、日銀が提言する「非金利面での付加価値」とは、単にお金を貸すだけでなく、経営コンサルティングや事業承継の支援など、顧客の課題解決に資する多様なサービスを提供することです。これこそが、金利の引き下げ競争から脱却し、地域に根差した地方銀行が本来目指すべき姿だと私は考えます。越境融資の増加は、地銀が新たな収益源を模索する中で起きた自然な流れかもしれませんが、今後は「量」ではなく「質」を追求する経営への転換が急務になっていると言えるでしょう。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*