初夏の訪れとともに、日本の伝統的な食文化である梅仕事のシーズンが本格的に到来しています。梅仕事とは、梅を加工して梅酒や梅干し、梅シロップなどを作る一連の作業のことです。その最中、梅酒製造のリーディングカンパニーであるチョーヤ梅酒(大阪府羽曳野市)が、2019年5月末から今期の漬け込み作業をスタートさせました。特に、和歌山県を代表する高品質なブランド梅である南高梅(なんこううめ)は、この時点では平年並みの収穫量が確保されている見通しで、今年もおいしい梅酒の完成が期待されます。
しかしながら、喜ばしいニュースばかりではありません。日本の梅の総収穫量は、梅農家の方々の高齢化や、若い世代を中心とした梅製品離れが原因で、年々減少傾向にあります。農林水産省のデータによると、2018年の梅の収穫量は11万2,400トンで、5年前と比較して9パーセントも減少しているのです。これは、農業の担い手が減り、さらに梅の生産に使われる農地、すなわち生産面積も縮小していることが大きく影響しています。日本の美しい梅文化が失われかねない、まさに危機的な状況と言えるでしょう。
こうした深刻な現状に対し、メーカー側も手をこまねいているわけではありません。チョーヤ梅酒は、日本の梅文化を次世代に継承し、若者の関心を取り戻すための画期的な取り組みを展開しています。その象徴が、2018年に京都にオープンした体験型店舗「蝶矢(ちょうや)」です。ここでは、数種類の梅、お砂糖、そしてお酒の中から、お客様自身が好きなものを自由に選んで、自分だけのオリジナル梅酒や梅シロップを気軽に作ることができるのが最大の特徴となっています。
🌱 梅文化の未来を担う「蝶矢」の魅力と製造最前線
この「蝶矢」のユニークな点は、梅たった1粒からでも漬け込み体験が可能であることです。これにより、梅仕事のハードルを劇的に下げ、今まで縁遠かった若い女性などから絶大な支持を集めていると言います。SNS上でも「梅がおしゃれで可愛い!」「自分だけの梅酒が作れて楽しい」といった好意的な投稿が多く見受けられ、連日賑わいを見せている様子がうかがえます。当初の予想を大きく上回り、1日当たりの売上高はなんと15万〜30万円と、約2倍にも達しているというのですから驚きです。赤くて小さな梅や、色鮮やかな金平糖(こんぺいとう)といった、見た目も美しい材料がそろっていることが、特に**「映え」を重視する若い層の心を見事に掴んでいるのでしょう。
漬け込み作業の最前線はどうなっているのでしょうか。2019年5月31日、チョーヤ梅酒の大阪府羽曳野市にある梅酒工場では、今シーズンの漬け込み作業が厳粛な雰囲気の中でスタートしました。作業員の方々が手際よく「紀州南高梅」と記された箱をベルトコンベヤーに乗せ、青梅は専用の機械で丁寧に洗浄されます。その後、ホワイトリカーと呼ばれる無味無臭の蒸留酒と氷砂糖の入った巨大な樽へと運ばれ、1年以上の熟成期間を経て、あの芳醇な梅酒へと生まれ変わるのです。
この重要な作業は、梅の収穫時期に合わせて、同年7月上旬頃まで続けられる予定であり、その間に使用される梅の総量は、実に4千トンから6千トンにも上ると言います。また、チョーヤだけでなく、サントリースピリッツやキリンホールディングス傘下のメルシャンといった他社も、6月に入ると一斉に漬け込み作業を開始する見込みです。今年の梅の品質や収穫量が最終的にどうなるかは、梅の生育に大きく関わる6月の降水量にも左右されるため、卸売業者の方々も気が抜けない状況であると推察いたします。
私は、こうした状況下で、チョーヤ梅酒が展開している「蝶矢」のような体験型ビジネス**こそが、日本の梅文化の危機を救う鍵になると強く信じています。単に製品を販売するだけでなく、梅に触れ、梅の魅力を再発見する機会を提供することで、若年層の梅への関心は必ず高まるはずです。今後は、梅酒をストレートで飲むだけでなく、カクテルや料理に活用するなど、新しい飲み方や楽しみ方を提案していくことが、梅の消費量をさらに押し上げる重要な要因になるでしょう。伝統を大切にしながらも、現代のライフスタイルに合わせた革新的なアプローチで、日本の豊かな梅文化が未来永劫続いていくことを願っています。