人口減少と高齢化が深刻化する四国において、JR四国が鉄道事業の苦境を乗り越えるための「攻め」として、高齢者向けリハビリ事業に進出したことは大きな話題を集めていました。しかし、同社はこの度、共同試験として位置づけていた当該事業からの早期撤退を決定しました。この判断は、主力の鉄道事業が直面している厳しい現実、そして新たな収益源を確保したいという経営陣の強い意志を浮き彫りにしています。
近年、四国地方では高速道路網の整備が進み、旅客の移動手段が多様化した影響で、JR四国の鉄道運輸収入は著しい落ち込みを見せています。例えば、2019年3月期には運輸収入が225億円となり、これは過去20年弱の間に2割以上も減少している状況です。収益の柱である運輸事業(鉄道およびバス)全体で見ても、その収益は年間300億円前後で頭打ちが続いており、事業全体の抜本的な立て直しが急務となっているのです。
そうした厳しい経営環境のなか、JR四国は、豪華な観光列車の運行や、駅を核とした交流人口(その地域に住む人以外の人)を増やす施策に取り組むなど、様々な努力を続けています。一方、駅ビル開発や分譲マンション事業など、鉄道以外の関連事業は順調に成長しており、2018年3月期には197億円と前期比で1割増を達成しました。2019年3月期も前年並みの収益を維持していますが、この関連事業部門のさらなる底上げを狙って、高齢者リハビリ事業に期待をかけていたものと見られます。
今回の高齢者事業からの早期撤退は、本来であれば関連事業の収益を押し上げるはずの試みであったため、その期待に沿えなかったという事実が残りました。しかし、「共同試験」という位置づけのもと、見込みがないと判断するや否やすぐさま撤退を決めた経営判断の速さは、将来の経営の柱となるノウハウを無駄に追い求めることなく、迅速に次の一手へ移行する姿勢を示していると評価できるでしょう。SNS上でも、「事業は失敗でも、損切り(見込みのない投資から早期に手を引くこと)の速さはさすがだ」「次にどんな事業を始めるのか注目したい」といった、経営陣の決断力を評価する声が多く見受けられます。
筆者の意見としては、地域社会の基盤を支えるJR四国が、主力の鉄道事業の低迷に甘んじることなく、高齢化社会という課題を新たなビジネスチャンスとして捉えようとする「攻めの姿勢」自体は、大いに支持すべきことです。今回の教訓は、新たな事業を育てることの難しさを改めて示すものとなりましたが、経営陣にはこの経験を糧として、次の時代を支える事業の種を見つけ、着実に成長させていく手腕が強く求められています。鉄道の安定収益確保が難しい現状、次の収益源をどこに求めるのか、その多角化戦略の行方を、今後も注視していくべきでしょう。