米国携帯電話サービス市場における大再編の行方が、司法の場で決着する可能性が出てきました。ソフトバンクグループの子会社であるスプリント(米携帯通信4位)と、TモバイルUS(同3位)が2018年4月に合意した経営統合計画に対して、ニューヨーク州など10の自治体は、消費者の利益を損なうとして、この合併の差し止めを求める訴訟を提起しました。そして、この訴訟に関する公判前審理が、2019年6月21日に米ニューヨーク州南部地区連邦地裁で開かれる見通しであると報じられています。自治体側の要請に応じ、地裁が早期の手続き開始を決定したことで、合併の実現に向けて大きな山場を迎えることになりました。
この巨額合併が実現するためには、米国の連邦当局である米連邦通信委員会(FCC)と米司法省、この二つの機関からの承認が必須となります。特に、日本の独占禁止法に相当する反トラスト法を管轄する司法省の動向に注目が集まっていました。これに先立ち、FCCのアジト・パイ委員長は、スプリントのプリペイド式携帯事業の売却や、地方における通信網の整備といった、競争維持のための条件を課す形で、合併を支持する意向を2019年5月に表明しています。しかし、司法省による審査はまだ完了しておらず、合併の可否については予断を許さない状況が続いていました。
このような状況のなか、10の自治体が2019年6月11日に提訴に踏み切ったのです。携帯大手2社の統合によって市場の競争が弱まり、結果として消費者が割高な料金を負担したり、サービスが低下したりするのではないかという懸念が、自治体側の主張の根幹にあります。SNSなどのインターネット上では、この合併によって「結局、料金は上がるのだろう」「消費者が置いてきぼりになる」といった、消費者目線での不安の声が散見されました。一方で、「5Gの早期普及には大規模な投資が必要であり、合併は不可欠だ」「世界との競争を考えれば、巨大な通信会社が生まれるのは当然の流れだ」という意見もあり、議論は白熱している模様です。
当時の米紙ニューヨーク・タイムズの電子版は、米司法省が提訴から間もない2019年6月17日の週に合併を承認する可能性があると報じました。もし司法省がFCCと歩調を合わせて合併を容認する結論を下した場合、連邦当局と州当局という、公的な立場にある二者が裁判所で合併の是非を争うという、異例の展開になることが予想されていました。通常、合併計画は司法省とFCCの承認を得られれば手続きを進めることはできますが、州当局からの差し止めリスクを抱えたまま合併作業を行うのは非常に困難な道のりです。多くの企業は、訴訟に発展した時点で計画を断念するケースも少なくありませんから、スプリントとTモバイルは、まさに**「世紀の合併」**をかけた瀬戸際に立たされていると言えるでしょう。
私自身の見解としては、携帯電話サービスのような生活に不可欠なインフラにおいて、競争原理が働くことは極めて重要だと考えます。携帯大手4社体制から3社体制へと移行することで、市場の寡占化が進み、長期的には消費者の選択肢が狭まる懸念は払拭できません。確かに、次世代通信規格である5Gネットワークの早期構築と広範囲な展開には、両社の持つ資産を統合し、大規模な投資を行う必要性は理解できます。しかし、その恩恵を享受できるかどうかは、競争が維持されるかどうかにかかっています。今回の自治体による提訴は、目先の利益だけでなく、将来的な市場の健全性を守るための、非常に意義深い行動であると評価するべきでしょう。今後の法廷闘争の展開が、米国の通信業界、そして世界の通信業界の未来を左右することになるかもしれません。