2019年6月14日、ステーキチェーン「いきなり!ステーキ」を展開するペッパーフードサービスが、米国のナスダック取引所へ上場廃止を申請したという衝撃的なニュースが飛び込んできました。同社は、日本の外食チェーンとして初めて、このナスダックへ米国預託証券(ADR)という形で上場を果たしてから、わずか9カ月という短期間での判断となりました。ADRとは、Non-U.S.企業の株式を米国市場で流通させるために発行される、預託銀行が裏付けを持つ証券のことで、今回のペッパーフードサービスにとっては、米国での資金調達やブランド力向上を目指す重要な一歩でした。しかし、米国事業の苦戦と市場での取引高の伸び悩みが響き、上場を続ける経済合理性、つまりコストに見合うだけのメリットが少ないと判断せざるを得なかった状況です。
同社がステーキの本場である米国市場に参入したのは2017年2月のことです。海外1号店をニューヨーク市内にオープンし、一時は11店舗まで拡大しました。その武器は、20ドル(当時のレートで約2200円)前後という手頃な価格と、気軽に楽しめる立ち食いスタイルという新しさでした。しかし、この「立ち食い」こそが、米国の消費者の嗜好と合わなかったと見られています。日本のビジネスパーソンには手軽さとスピード感が受け入れられた「立ち食い」も、米国では落ち着いて食事をしたいというニーズが根強く、客足の回復には至らなかったのでしょう。
客足を回復させようと、店舗では「立ち食い」をやめてテーブル席を設けるなどの試行錯誤を重ねたようですが、その努力も実を結ばず、2019年2月には7店舗の閉鎖に追い込まれています。一部の店舗は業態転換を進めるとしていますが、事業の立て直しは急務となっています。この米国事業の不振は、会社の業績に大きく響きました。ペッパーフードサービスの2018年12月期連結決算では、この影響が直撃し、約25億円もの損失を計上しています。その結果、同社は実に8年ぶりの最終赤字へと転落してしまったのです。
この上場廃止申請の報せは、SNS上でも大きな反響を呼んでいます。多くのユーザーが「立ち食いは日本の文化で、海外では受け入れられにくい」「アメリカではステーキはもっと高級なものという認識があるのでは」「ビジネスモデルの調整が遅れたのではないか」といった、ビジネス戦略の難しさに言及するコメントを投稿している状況です。私自身の意見として、今回の結果は、日本のビジネスモデルをそのまま海外に持ち込むことの難しさ、特に食文化が深く根付いている市場でのローカライズの重要性を改めて浮き彫りにした事例だと感じています。手軽な価格帯のステーキというニッチな市場を開拓しようとした挑戦は評価できますが、文化や習慣の違いを乗り越えるための柔軟な対応が、もう少し必要だったかもしれません。
🇺🇸米国市場の壁とSNSが指摘する「立ち食い」の限界
今回の「いきなり!ステーキ」の上場廃止申請と米国事業のつまずきは、グローバル展開を目指す日本企業にとって、非常に教訓的な事例となるでしょう。特に、低価格帯で品質を担保するという戦略は、コスト管理の面で大きな挑戦となります。さらに、米国での生活習慣や外食に求める価値観は、日本とは大きく異なるのです。SNSのコメントにも見られるように、「気軽にさっと食べる」というスタイルが、カジュアルダイニングとしての価値観が強い米国では、必ずしも歓迎されなかったと言えるのではないでしょうか。テーブル席の導入などのテコ入れも行われましたが、この撤退判断は、早期に損切りの判断を下した点で、経営の英断だったと評価できる一面もあるでしょう。今後の日本市場での挽回と、残る海外店舗の行方に注目が集まっています。