世界貿易機関(WTO)は2019年6月14日、中国の知的財産権侵害をめぐり、米国が提訴していた紛争審理を一時中断すると発表しました。これは、米国からの要請を中国が受け入れたもので、WTOで一審の役割を担う紛争処理小委員会(パネル)が、今年の12月末まで審理を停止することを決定したのです。この動きは、激化する米中間の貿易摩擦において、大きな注目を集めています。
米国は、なぜこのタイミングで審理中断を求めたのでしょうか。WTOのルールでは、提訴した国から申し出があれば、最長で12カ月間、審理を中断することが可能とされていますが、今回、米国は具体的な理由を公にしていません。しかし、この背景には、同年6月末に大阪で開催される20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)での、ドナルド・トランプ米大統領と習近平国家主席による首脳会談への思惑が強く働いていると見るのが自然でしょう。
そもそも、この問題は2018年3月に米国が提訴したものです。米国は、中国が自国に進出する企業に対し、技術の移転を強制している点や、その他の形で知的財産権を侵害していると主張していました。この「技術移転の強要」とは、外国企業が中国市場へ参入する際に、その見返りとして自社の先進技術を中国側のパートナー企業に供与するよう、実質的に強いられる慣行を指します。これは知財(知的財産)の公平な保護という国際的な原則に反すると考えられています。
SNS上では、この審理中断のニュースに対し、「G20に向けて交渉を円滑にするためのポーズではないか」「結局、米中トップ会談の結果次第ということか」といった、交渉の行方を見定める冷静な反応が多く見受けられます。また、「知財侵害は根深い問題。一時中断で済む話ではない」と、中国の構造的な問題に対する懸念を示す意見も少なくありません。この中断は、あくまで審理の一時停止であり、問題そのものの解決を意味しないため、今後の動向に注目が集まるのは当然でしょう。
編集者として私見を述べさせていただきますと、今回のWTO審理中断は、米中間の貿易交渉における「一時的なガス抜き」として非常に重要な意味を持つでしょう。G20という国際的な大舞台を前に、互いに強硬姿勢を緩め、交渉のテーブルに戻るための環境整備を図ったものと考えられます。米中間の対立は、世界のサプライチェーンや経済全体に大きな影響を与えているため、首脳会談での実質的な進展を強く期待したいところです。
しかし、知財紛争の根源にある構造的な対立は簡単には解消されません。WTOのパネル審理が再開される可能性も大いに残されており、2019年12月末という中断期限が迫る頃には、再び緊張が高まることが予想されます。世界経済の安定のためにも、両国には建設的な対話を通じて、公正な国際貿易の枠組みを再構築することが求められているのではないでしょうか。