日本最大級の金融機関であるゆうちょ銀行が、投資信託、通称「投信」の販売において、高齢者に対する不適切な手続きを行っていた実態が、2019年6月14日に明らかになりました。今回の問題は、同社の直営店およそ230店舗のうち、驚くべきことに約9割に及ぶ店舗で発覚しており、社内ルールや業界の取り決めに反する行為が1万5千件以上にも上ると推測されています。
この事態を受け、ゆうちょ銀行は問題の全容解明を急いでおり、これまで収益の柱と位置付けていた投信販売戦略の大幅な見直しを迫られる見通しです。SNS上では「やはり、銀行も信用できないのか」「大事な貯金が高齢者を狙った不適切な販売に利用されていたとしたら許せない」といった、金融機関全体への不信感を募らせる厳しい反響が多数見受けられます。
高齢者の健康状態確認を怠るなどの違反が判明
ゆうちょ銀行の池田憲人社長は2019年6月上旬、社員に向けて「多数の店舗・社員において、投信の販売時に社内ルール等に即しない取り扱いや営業行為が認められた」とはっきり言及したメッセージを送付し、この問題が全社的なものであることを認める形となりました。影響は大きく、関連する2018年度の社内表彰式まで中止に追い込まれています。
不適切販売が判明したのは、主に高齢者を対象とした投信の販売です。昨年秋以降の社内調査で、社内で定められた正規の書式を利用しなかったり、本来は勧誘を行う時点で行うべき、お客様の健康状態や、金融商品を理解できるかどうかの確認作業を、購入の申込手続きと一緒に行ってしまったりといった行為が明るみに出ました。こうした問題のある事案は、社内アンケート調査により、直営店の200以上で把握されたということです。
ここで重要になるのが、日本証券業協会が定めている高齢者への勧誘・販売に関するガイドライン、つまり「業界の自主的な規範」です。このガイドラインでは、例えば「勧誘を行うたびに、管理職などの責任者が面談を通じて、高齢者の健康状態や理解力を確認する」といった細かな規定が設けられています。今回のゆうちょ銀行のケースは、この大切な業界ルールにも抵触している可能性が高く、お客様本位の営業姿勢が問われている状況と言えるでしょう。
巨大金融機関の収益戦略と顧客保護
ゆうちょ銀行は2019年3月末の時点で約181兆円という、国内の金融機関でも飛び抜けて大きな規模の貯金残高を誇っています。親会社である日本郵政は、現在も国が過半数の株式を保有しており、公的な側面も持ち合わせています。しかし、近年、市場の金利が下がり続ける「マイナス金利」の環境下で、以前のように貯金業務だけでは大きな収益を上げることが難しくなり、収益力を高めるために投信の販売に積極的に力を入れてきました。
その結果、同社の年間販売額は2018年度で約8900億円に上り、ここ数年、販売額が二桁成長を続けるほど、投信販売は同社の主力事業へと変貌を遂げていました。同社の前身である「郵便貯金」時代からの顧客層を考慮すると、高齢の貯金者が多いことが、今回の不適切な勧誘の背景にあると考えられます。
私個人の意見としては、ゆうちょ銀行のような公的な背景を持つ巨大金融機関こそ、最も厳格な顧客保護、特に金融リテラシーが相対的に低いとされる高齢者への細心の注意を払うべきと考えます。同社広報部は「原因究明に取り組み、再発防止に努める」とコメントしていますが、この問題は単なる社内ルールの逸脱ではなく、金融機関としての信頼性、そして何より高齢者の大切な資産を守るという倫理的な責任に関わる重大な事案でしょう。投資信託(投信)は元本割れのリスクを伴う商品であるため、高齢者への販売においては、より一層、丁寧な健康確認や商品理解度の確認が不可欠です。