再生可能エネルギー、特に風力発電の分野で、今、世界的な業界再編の動きが活発になっています。この再編の中心にあるのは、欧州の主要企業たちです。これまで各国で普及を後押ししてきた、再生可能エネルギーで作られた電気を固定価格で買い取る制度(FIT:Feed-in Tariff)が、消費者への電気料金負担増大を理由に見直され始めていることが、再編の大きな引き金になっているのです。
発電コストの低減が至上命題となる中で、発電事業者が風車メーカーからより安く製品を調達しようとする傾向が強まっています。これに対抗し、企業は買収や統合を通じて規模を拡大し、市場での価格交渉力、すなわち価格主導権を確保しようと競い合っているのです。これは、今後の風力発電市場の勢力図を大きく塗り替える、見逃せないトレンドでしょう。
巨大化する発電事業者とメーカーの苦境
世界的な再編の動きは、主に欧州の発電事業者を中心に進展しています。例えば、フランスの大手電力会社エンジーと、ポルトガル最大手EDPは、2019年5月に洋上風力発電事業の統合を発表しました。これは巨額の投資を伴うプロジェクトであり、年内には合弁会社を立ち上げて事業を開始し、2025年までに最大700万キロワットの発電能力を持つことを目指しているとのこと。両社は、洋上風力の有望市場である米国や日本への進出も視野に入れています。
洋上風力発電能力で最大手とされるデンマークのオーステッドや、陸上を含む風力で世界第2位のスペインのイベルドローラなども、積極的に買収を重ねることで、規模を拡大してきました。このように再編を通じて力を増した発電事業者からは、風車メーカーに対して一層のコスト削減圧力がかけられており、これがメーカー側の経営を圧迫しています。例えば、洋上風力向けで三菱重工業と提携する、風車メーカー世界最大手のデンマークのヴェスタスは、2019年1月~3月期の営業利益が前年同期比で66パーセントの大幅減益となり、8四半期連続で前年実績を下回るという苦境に直面しています。
メーカー側にも構造改革と回復の兆し
メーカー側も、生き残りをかけて構造改革を加速させています。2017年4月に独シーメンスの風力発電部門とスペインのガメサが統合して誕生した、シーメンス・ガメサ・リニューアブルエナジー(SGRE)は、約6,000人の人員削減といったリストラ策を実施した結果、ようやく増益基調に転じることができた状況です。また、業界中位の企業は一層厳しい状況に置かれ、例えばドイツのセンビオンは2019年4月に経営破綻し、現在自主再生手続きに入っています。現地報道によると、SGREや投資ファンドが同社の買収に関心を示しているようです。
一方で、メーカー側にも価格交渉力が回復しつつある兆しも見え始めています。ヴェスタスのアンダース・ルネバード最高経営責任者(CEO)は、「受注価格は安定化しつつある」と述べています。これは、受注残が過去最高水準に積み上がっていることが、メーカー側の交渉力を強める要因となっているためでしょう。SNSでは、「FITの見直しは当然の流れだが、メーカー再編による技術革新とコストダウンは歓迎すべき」「巨大化する海外勢に対し、日本のメーカーは生き残れるのか」といった、期待と懸念が入り混じる反響が見られます。
日本メーカーの試練と市場の展望
洋上風力の伸びが期待される日本市場でも、同様の競争の波が押し寄せています。国内メーカーは、世界の巨大市場でシェアを獲得できず、量産効果(生産量が増えるほど製品あたりのコストが下がること)を出せないことから、相次いで撤退を決定しています。日本製鋼所は2017年3月末に風力発電機の出荷を終了し、日立製作所も2019年1月には風車の自社生産の停止を発表しました。この事実は、グローバルな規模で展開する欧州勢に対抗することの難しさを示しています。
風力発電は、世界の発電量に占める割合が水力を除けば約5パーセントと、太陽光の2.2パーセントを上回り、再生可能エネルギーの中核を担っています。従来の陸上風力に加え、洋上風力(海上に風車を設置する発電方式)が主流になりつつあることで、設置場所が大幅に増えたことが成長の背景にあります。世界風力会議(GWEC)は、新規導入量が2023年まで毎年5,500万キロワット以上と予測しており、今後も市場の拡大は見込まれるでしょう。しかし、2018年の新規導入量は5,100万キロワットと、2017年と比較して4パーセント減少し、成長の鈍化も見られています。
このような状況下で、再編を通じて経営体質の強化が進めば、普及ペースが落ち着いた感のある風力発電が、再び成長を加速させる可能性は十分にあると考えられます。このコスト競争と再編の波を乗り越え、いかに低コストで安定したエネルギー供給を実現できるかが、今後の風力発電産業の鍵を握るでしょう。