2019年6月15日に情報が公開された、新規株式公開(IPO)を控えるヤシマキザイ(証券コード:7677)は、鉄道部品を専門とする大手商社として、鉄道インフラを足元から支える存在として注目を集めています。特に、ブレーキの制御機器をはじめとする重要な車両部品の供給を担っており、その主要な仕入れ先には日立製作所などの大手メーカーの名前が挙がっています。創業は1948年と古く、日本の鉄道の歴史とともに歩んできた老舗企業だと言えるでしょう。
日本の鉄道車両は、その部品の種類やメーカーが多岐にわたるため、受発注や配送を一括して担う商社の役割は極めて重要です。ヤシマキザイは、この複雑なサプライチェーンにおいて、なくてはならない存在として機能しています。売上高の3割強は、旧国鉄時代からの長い取引実績を持つJR各社向けが占めており、これは同社の信頼性と安定した事業基盤の証左と言えるでしょう。長年のノウハウとネットワークは、新規参入が難しいとされる鉄道業界における大きな強みとなっています。
🚂 海外展開で新たな成長ステージへ:世界に広がる日本の技術
国内市場で確固たる地位を築く同社ですが、新たな成長の柱として海外市場の開拓に注力しています。現在の海外売上高比率は約10%ですが、これを7〜10年後には30%まで引き上げるという、積極的な目標を掲げています。特に中国を筆頭に、東南アジアでの需要を取り込むことに力を入れており、政府開発援助(ODA)関連の需要も積極的に獲得していく方針です。また、欧州市場への本格的な進出にも意欲を見せており、日本の高品質な鉄道部品とサプライチェーンの効率性を世界に広げていく計画です。
東南アジアなどの一部地域では、企業の株式上場が入札において有利に働くケースもあるため、今回のIPOは海外展開の加速という点でも大きな意味を持っています。高田一昭社長は、今回の株式公開で調達する約3億円の資金を、業務の効率化を図るシステム投資のほか、ベトナムやミャンマーなどの海外拠点の運営費に充てるとしており、今後の成長戦略の基盤整備に投じられる予定です。
💡 安定経営と株主還元:投資家が注目すべきポイント
今回のIPOにおいては、売り出しと公募が行われます。公募株はすべて金庫株の処分に割り当てられる形となっています。また、第2位株主であり仕入れ先でもある神戸製鋼所グループの機械メーカーが保有する全株と、創業家出身の取締役の家族が保有する株式の一部が、上場に伴い市場に売り出されることも明らかになりました。これは、株式の流動性を高め、より開かれた企業体制へと移行する狙いがあると考えられます。
投資家にとって魅力的なのは、同社の株主還元に対する姿勢でしょう。高田社長は「配当性向を30%に近づける」と明言しており、安定した収益基盤を持つ老舗企業ならではの、手堅い株主還元が期待できると言えるでしょう。直近の業績(単体)を見ると、2019年3月期の売上高は370億14百万円、純利益は479百万円で、続く2020年3月期の業績予想(予)では、売上高は373億42百万円、純利益は400百万円と、堅調な推移が見込まれています。1株利益は2019年3月期が185円8銭、2020年3月期(予)が138円88銭、1株配当は両期とも25円の予定です。
ヤシマキザイは、2019年6月26日に東京証券取引所市場第二部への上場を予定しており、今後の展開に多くの期待が寄せられています。東京都中央区に本社を構え、高田一昭社長が率いる同社の申込期間は6月18日から6月21日、払込期日は6月25日、主幹事は野村證券が務めます。鉄道という社会の基盤を支え、海外展開という大きな成長戦略を描くヤシマキザイのIPOは、長期的な視点で魅力的な投資先となる可能性を秘めているのではないでしょうか。