老後資金2000万円問題に終止符!共働きと年金繰り下げで不安を解消する資産形成術を徹底解説

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2019年6月15日のメディア&インフォメーション(M&I)記事で、金融庁の金融審議会が作成した報告書が大きな波紋を呼びました。この報告書では、老後の生活資金について「30年間で2000万円が不足する」という試算が示されており、これが国民の間に「老後資金2000万円問題」として広がり、大きな不安と誤解を生んだとして事実上の撤回へと追い込まれたのです。しかし、本報告書の真の目的は、長寿化が進む高齢社会において、一人ひとりが老後に必要な資金を正しく把握し、自助努力によって長期的に資産形成に取り組む重要性を強調することにあり、その本質的な趣旨は決して間違っていなかったと編集者は考えます。

この「2000万円不足」の根拠となったのは、総務省が2017年に実施した家計調査のデータでした。具体的には、高齢夫婦の無職世帯の平均的な家計を見ると、1カ月の収入が年金中心に約20万9000円であるのに対し、支出が約26万4000円となっており、毎月約5万5000円の赤字が生じているというのです。この赤字が仮に30年間続くと仮定した場合、単純計算で不足額が2000万円に達する、という仕組みでした。報告書自体は「これはあくまで平均値であり、個々人の収入や支出、ライフスタイルによって大きく変動する」と注記していましたが、残念ながら「2000万円」という数字だけが一人歩きし、SNSなどでも「年金だけでは暮らしていけないのか」「国が老後の面倒を見ないと言っている」といった批判的な声や、将来への不安を訴える意見が多く飛び交うこととなりました。

老後資金の不足額は「働き方」と「住まい」で大きく変わる

しかし、実際のところ、老後資金の必要額は世帯構成やライフスタイルによって大きく変わってきます。例えば、老後の支出の規模について、記事では退職時の約7割を目安とするのが一般的だと紹介しています。今回の試算では、総務省の家計調査に基づく平均的な支出額(月約26万円強)と、「ゆとりある老後生活」を送るための支出額(同34万9000円)という二つのパターンを提示し、30年間で必要な総額はそれぞれ9500万円と1億2500万円になると試算されました。

一方で、老後の収入の柱となる公的年金は、国民共通の基礎年金に加え、会社員などが加入する厚生年金(こうせいねんきん)の二階建て構造となっており、特に厚生年金は現役時代の収入と加入期間によって金額が大きく変わるため、世帯ごとの差が大きくなります。例えば、夫が平均的な収入で40年間勤め、その間妻が専業主婦であった場合(厚生労働省のモデル世帯)、夫婦の年金額は月22万1500円とされています。この場合、30年間の年金総額は約8000万円となり、平均的な支出総額9500万円に対して1500万円の不足が生じます。

ここで重要な注意点があります。上記の家計調査の対象世帯の95%が持ち家であり、住居費の平均が月1万円強と非常に少ないことです。もし賃貸住宅に住み続けている場合や、将来自宅の住み替えやリフォームを考えている場合、さらには有料老人ホームへの入居や長期的な介護が必要になった場合などは、支出は想定より大幅に膨らむことになります。平均値だけを見て「1500万円で足りる」と安易に考えるのは危険であり、ご自身の状況に合わせて不足額を試算することが極めて重要になってくるでしょう。

老後の安心を得るための二つの強力な武器

では、老後の資金不足に対する有効な対策は何でしょうか。記事では、二つの強力な対策が紹介されています。一つは「共働き」です。夫婦それぞれが平均的な収入で60歳まで共働きした場合の年金額を試算すると、夫婦合計で月28万円強となり、30年間の年金総額は1億円強となります。これは平均的な支出総額9500万円を上回る計算であり、共働きが老後の経済的な安定に非常に貢献することが分かります。

もう一つは、年金の「繰り下げ受給(くりさげじゅきゅう)」です。これは、公的年金を受け取り始める年齢を、本来の65歳から遅らせることで、将来受け取る年金額を増やす制度のことです。具体的には、受給開始を1カ月遅らせるごとに年金額が0.7%増え、上限の70歳まで遅らせた場合は年金額が42%も増加します。例えば、夫婦が65歳まで共働きをした上で、長生きしそうな妻だけが70歳まで繰り下げ受給を選択した場合、夫婦の年金額は70歳から月約36万円に増加し、30年間の総額は約1億2000万円近くになる試算です。社会保険料などの負担増を考慮すると手取りの増額は少し緩やかになりますが、その効果は極めて大きいと言えるでしょう。

老後の収入源としては、他に定年退職金も挙げられますが、平均額は約2000万円であるものの、長期的に減少傾向にあることに加え、住宅ローンなどの返済に充てる必要がある世帯も少なくありません。また、自営業者など厚生年金に加入していない方々は、公的年金が国民年金のみとなるため、より一層、現役時代からの計画的な資産形成に取り組むことが求められます。老後の不安を解消するためには、公的年金だけに頼るのではなく、この共働きや繰り下げ受給といった制度を賢く活用し、不足する金額を長期的な積み立てや分散投資(ぶんさんとうし:一つの資産に集中せず、複数の種類や地域に分けて投資することでリスクを軽減する手法)によって準備していく姿勢が不可欠です。この報告書が提起した自助努力の重要性は、今も変わらず私たちが向き合うべき課題だと言えるでしょう。

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