2019年6月14日、日本労働組合総連合会愛知県連合会(通称:連合愛知)が、2019年春季労使交渉の賃上げに関する5月末時点の集計結果を公表しました。このデータによると、定期昇給を含む労働者一人あたりの平均賃上げ額は5,025円となり、賃上げ率は1.84%という結果になりました。しかしながら、この数字は前年の同時期と比較すると、賃上げ額で227円、賃上げ率で0.12ポイント下回るものであり、連合愛知からは「賃上げのムードが以前より弱くなったのではないか」という懸念の声が上がっています。
この結果を受け、SNS上では「やはり景気の勢いが落ちてきたのだろうか」「中小企業への賃上げの波は届いているのか心配」といった、今後の経済状況に対する不安の声や、賃上げの恩恵が広く行き渡るかについての関心が高まっています。特にベースアップ(ベア)、つまり、年齢や勤続年数に応じて自動的に給与が上がる「定期昇給」とは別に、企業の業績改善などを背景に基本給の水準そのものを引き上げることを指しますが、これがどの程度実現しているのかに注目が集まっているのです。
今回の交渉では、要求を提出した420組合のうち、5月末までに348組合が会社からの回答を得ました。このうち、賃上げ額を非公表としている組合を除き、ベースアップを勝ち取ったのは220組合にとどまっています。注目すべきは、企業規模別のデータでしょう。組合員数300人未満の中小組合の平均賃上げ額は4,674円(賃上げ率1.74%)、一方、300人以上の大手組合では5,471円(賃上げ率1.95%)となりました。
大手と中小の賃上げ率の差は0.21ポイントとなり、前年同時期と比べると0.02ポイント拡大しています。この結果だけを見ると、賃金格差が再び広がりつつあるようにも見えますが、連合愛知は「大手と中小の賃金格差縮小の流れは引き続き維持されている」という見解を示しています。私個人の意見としては、たとえわずかでも格差が拡大した事実は、労働市場の二極化が進むことへの警鐘と受け止めるべきだと考えます。すべての労働者が適正な評価を受け、賃金水準の底上げが実現されることが、持続可能な経済成長には不可欠でしょう。
賃金格差是正へのベースアップの貢献度
今回の集計でベースアップが実施された220組合に絞ると、平均賃上げ額は5,286円(賃上げ率1.95%)となりました。このうち、ベースアップ相当分は1,215円(賃上げ率の0.45%)です。さらに規模別に見ると、大手組合のベースアップ相当分が1,194円(0.42%)であったのに対し、中小組合は1,241円(0.49%)と、金額・率ともに中小組合が大手を上回る結果となりました。
連合愛知の三島和弘事務局長が「賃上げの流れは継続している。中小と大手の格差是正に向け、賃上げ幅だけでなく、賃金水準そのものにもこだわりたい」と述べているように、中小組合のベースアップが大手組合を上回った事実は、賃金格差の是正に向けた積極的な動きとして評価できます。これは、日本の労働組合が長年掲げてきた目標の一つであり、このトレンドが今後も継続することを強く期待したいところです。
ベア非公表の増加が今後の集計に与える影響
一方で、集計作業に影響を及ぼす可能性のある新たな動きも表面化しています。2018年のトヨタ自動車に続き、今年はアイシン精機など、ベースアップ額を公表しない組合が7組合から33組合へと大幅に増加しました。企業側には、競争上の理由などから具体的な賃上げ額の公表を控える意図があるのかもしれませんが、この非公表の流れが今後も続くと、連合愛知の集計方法自体を見直す必要が出てくる可能性があります。
賃上げの実態を正確に把握し、労働者全体の利益につながる交渉戦略を立てるためには、透明性の確保が極めて重要になります。集計データは、労働環境の改善に向けた議論の土台となるものですから、ベースアップ額の非公表の動きは、賃上げの実態把握を困難にする要因となりかねません。連合愛知をはじめとする労働組合には、この新たな課題に対し、どのように対応していくのか、迅速な検討が求められるでしょう。