近年、高齢ドライバーによる痛ましい自動車事故の増加が社会的な問題となっています。そんな中、運転免許証の自主返納を促しつつ、同時に行政手続きのデジタル化の要であるマイナンバーカードの普及も目指すという、一石二鳥の革新的なキャンペーンを兵庫県神戸市がスタートさせました。この取り組みは、単なる行政サービスに留まらず、高齢者の安全確保と利便性向上を同時に図る画期的な試みであると言えるでしょう。
このユニークなキャンペーンの対象となるのは、65歳以上の神戸市民です。具体的には、車の運転免許を返納し、さらに身分証明書としても利用可能なマイナンバーカード(個人番号カード)の交付を申請した方が対象となります。応募期間は2019年6月15日から同年8月31日までと定められており、多くの高齢者の方々の参加が期待されています。特に、免許返納後に身分証明書が無くなってしまう不安を解消する「身分証としてのマイナンバーカード」の交付申請を組み合わせた点に、神戸市の細やかな配慮が感じられます。
このキャンペーンの目玉は何といってもその豪華景品の数々です。「特等」として用意されているのは、なんと1組2名様に当たる「1週間の台湾クルーズ」!海に面し、クルーズ船の寄港地としても知られる神戸らしい、魅力的なプレゼントです。他にも、神戸市と高松市を結ぶ「ジャンボフェリー」の往復券(10組20名様)など、旅心をくすぐる景品が多数そろえられています。当選者は同年9月上旬に厳正な抽選によって決定される予定となっています。
さらに、豪華景品の抽選に外れてしまった場合でも、申し込みされた方全員に神戸港の周遊券(ペア)がプレゼントされるという大盤振る舞いです。これは応募者全員にとって嬉しい特典であり、参加へのハードルを大きく下げる要因となるでしょう。神戸市の久元喜造市長も「海を楽しめる神戸らしいプレゼントでさらに(マイナンバーカードの)普及を促したい」と述べており、このキャンペーンへの強い期待と意気込みがうかがえるのです。
マイナンバーカードとは、国民一人ひとりに割り振られた12桁の個人番号(マイナンバー)が記載された顔写真付きのICカードのことです。本人確認のための公的な身分証明書として使えるほか、コンビニでの住民票などの公的証明書の取得や、今後は様々な行政手続きのオンライン化の基盤となることが期待されています。このマイナンバーカードの交付率について、神戸市は2019年4月1日時点で16.7%と、全国の20の政令指定都市の中でトップを誇っているのです。これは、市が同年4月からコンビニでの交付手数料を引き下げるなどの支援策を積極的に強化してきた成果であると言えるでしょう。
この神戸市のユニークな取り組みは、SNS上でも大きな反響を呼んでいます。「クルーズが当たるなら免許返納を検討する」「高齢化社会における行政の新しいアプローチとして素晴らしい」「身分証明書の問題が解消されるのが良い」といった好意的な意見が多く見受けられ、政策への関心の高さを示しています。高齢者にとっての「運転」と「身分証明」というデリケートな課題に対し、景品という明るいインセンティブで解決を図る神戸市の柔軟な発想と実行力は、他の自治体も参考にするべき先進的なモデルケースとなるのではないでしょうか。