2019年6月14日、日本銀行福岡支店が公表した九州・沖縄地方の金融経済概況は、景気の全体的な基調判断を「緩やかに拡大している」として、この表現を3カ月連続で維持いたしました。一見すると明るい状況が続いているように見受けられますが、その内実には注意すべき動きが潜んでいるようです。特に、個人消費が引き続き堅調さを保っている一方で、地域の生産や輸出の動きは、全体として弱めの傾向を続けていると分析されています。このバランスの悪さが、今後の景気動向にどのような影響を及ぼすのかが注目されるポイントでしょう。
地域経済を支える柱の一つである生産と輸出の分野では、懸念すべき状況が報告されています。例えば、半導体製造装置の分野では、主要な輸出先である中国や韓国向けだけでなく、ヨーロッパ(欧州)向けの受注も減り始めているというのです。この背景には、アメリカ合衆国と中華人民共和国の間で激化している米中貿易摩擦の影響があり、ヨーロッパから中国への資本財、すなわち生産活動に使われる機械や設備などの輸出が減速したあおりを受けている可能性が高いと考えられます。このような世界経済の大きなうねりが、九州・沖縄地方のモノづくりに直接的な影響を与えている状況と理解できます。
さらに、電子部品の生産状況にも、例年とは異なる様子が見られます。例年であれば、スマートフォン(スマホ)の新製品発売に向けた増産時期にあたるにもかかわらず、「例年よりも勢いに欠ける」という評価が下されました。世界的なサプライチェーン(供給網)の一端を担う九州・沖縄にとって、主力製品の生産が鈍ることは大きな懸念材料と言えるでしょう。日銀福岡支店の宮下俊郎支店長は、この先のリスクについて「下方に厚い」と指摘されています。これは、景気が悪化する方向へのリスクのほうが、好転する方向へのリスクよりも大きい、つまり景気の下振れ懸念が高いという非常に重要な警告と受け止められます。
一方で、景気を力強くけん引しているのが個人消費の分野です。インバウンド、すなわち訪日外国人による消費や、富裕層向けの消費が好調を維持し、全体としての消費を増加傾向に導いているのです。しかし、生産と輸出の減速が続けば、いずれは雇用環境や所得にも影響を及ぼし、個人消費の勢いも鈍ってしまうリスクを孕んでいます。このため、日本銀行は企業の設備投資の実施動向を、今後の景気判断の基調を占う鍵として重視しているのです。企業が将来を見据えて投資を続けるかどうかが、景気の「緩やかな拡大」を維持できるか否かの試金石となるでしょう。
この日銀の発表に対し、SNS上でもさまざまな反響が寄せられています。「個人消費は良いと言っても、地域格差が大きいのでは」「貿易摩擦の影響がじわじわ来ているのを感じる」といった、現状への不安や肌感覚に基づいた意見が多く見られました。特に、製造業に携わる人々からは、受注減や生産調整への懸念を示す声が目立ちます。このような状況を鑑みるに、九州・沖縄の景気は、個人消費という明るい光がある一方で、海外情勢に左右される製造業という暗雲が立ち込めている「光と影」が鮮明になったと言えるでしょう。今後は、世界経済の動向と、それに対する企業の設備投資の決断が、地域経済の運命を左右する重要な要素になると考えられます。