東北の要衝、仙台市において「全国最大」の規模を誇る公営ガス事業の民営化プロジェクトが、いよいよ本格的に再始動しました。2019年に入り、仙台市は有識者会議を立ち上げ、未来のエネルギー供給の在り方を決定づける公募条件の議論を開始しています。かつてリーマン・ショックの煽りを受けて一度は頓挫したこの計画ですが、今回は市側の並々ならぬ「本気度」がひしひしと伝わってきます。
ネット上のSNSや掲示板では、「ついに動き出したか」「光熱費にどう影響するのか気になる」といった市民の関心に加え、「民間ならではの柔軟なサービスを期待したい」という前向きな声も上がっています。一方で、インフラの売却という大きな決断に対し、慎重な議論を求める意見も散見されており、まさに地域経済を揺るがす重大なトピックスとして注目を集めている状況です。
エネルギー界の「プロ中のプロ」が集結!2019年7月から始まった緊密な議論
仙台市の覚悟は、有識者委員会のメンバー選定にも色濃く反映されています。2019年7月22日に開催された初会合では、委員長に政府のエネルギー政策にも深く関わる東京理科大学大学院の橘川武郎教授を招聘しました。市ガス局が「プロ中のプロ」と全幅の信頼を寄せる橘川教授を筆頭に、過去の議論を知る東北大学大学院の福嶋路教授も加わり、盤石の体制が整えられています。
この動きを、関連企業が見逃すはずもありません。初会合の会場には、驚くべきことに東北電力のガス事業部長の姿がありました。同社は会合のわずか3週間前となる2019年7月1日に、ガス事業部を独立した組織として発足させたばかりです。トップ自らが傍聴に訪れるという異例の事態に、市幹部も驚きを隠せませんでしたが、それだけこの事業が持つポテンシャルの高さが証明されたと言えるでしょう。
ここで改めて整理しておくと、ガス事業の民営化とは、自治体が運営していた公共サービスを民間企業に委ねることを指します。これにより、企業の競争原理が働くことで経営の効率化が進み、新しいサービスや料金プランの多様化が期待できるようになります。仙台市にとっては、実に30年来の悲願とも言えるプロジェクトなのです。
現在は、2019年12月の答申まとめに向けて、月に一度のペースで非公開の熱い議論が交わされています。東北電力の原田宏哉社長は「議論を注視し、事業性を見極める」と冷静な姿勢を保っていますが、10年前の公募にも応じている経緯があるため、同社が有力な候補として浮上してくる可能性は極めて高いと私は分析しています。
民営化の鍵を握る「LNG契約」と「コンセッション方式」の壁
今回の民営化には、いくつかのハードルが存在します。まず議論の焦点となるのは「コンセッション方式」の採用可否です。これは、自治体が公共施設の所有権を保持したまま、運営権だけを民間企業に売却する仕組みを指します。最近では大津市が2019年4月に導入したことで話題となりましたが、仙台市の場合は配管網が市外にも広く及んでいるため、権利関係が複雑になり、導入は難しいとの見方が出ています。
また、大きなポイントとなるのが、マレーシア企業との間で結ばれている「LNG(液化天然ガス)」の輸入契約です。LNGとは天然ガスをマイナス162℃まで冷却して液体にしたもので、仙台市は2019年時点で残り9年の契約期間を抱えています。輸送に使用する船が小型で効率面での制約はありますが、仙台市は自前のLNG基地を持つ強みを活かし、これをむしろ「参入のメリット」として提示する構えです。
市は、民営化の実現までに少なくとも3年の期間が必要だと見込んでいます。2017年度末時点で約406億円に達する企業債(インフラ整備のための借金)の処理など、クリアすべき課題は山積みです。しかし、この巨大なマーケットが民間に開放されることは、地域のエネルギー革命の号砲となるはずです。今後の公募条件の設定こそが、仙台の未来を左右すると言っても過言ではありません。
編集部としては、単なる経営効率化だけでなく、災害時の強靭さや市民への還元がどう担保されるかに注目していきたいと考えています。公共の利益を守りつつ、民間の活力をどう引き出すのか。2019年下半期、仙台市が下す決断から目が離せません。今後もこの動きを追い続け、最新情報をお届けしてまいります。