2019年08月に東京・大手町で開催された、九州工業大学の創立110周年記念フォーラムが大きな注目を集めています。あえて拠点のない都内で「九州から発信する新時代の産学連携」を掲げた背景には、同大学が抱く強い危機感がありました。数多くの優れた研究成果を持ちながら、それを産業界へ十分に還元できていないという現状を打破しようとする、熱い決意が伺えます。
現在の国立大学を取り巻く環境は、かつてないほど厳しい競争の渦中にあります。文部科学省が2017年から導入した「指定国立大学法人制度」は、世界最高水準の教育研究活動を展開し、社会発展を牽引する大学を重点的に支援する仕組みです。しかし、現時点で選出された7つの法人はすべて大阪より東側に集中しており、九州を含む西日本の大学にとっては、文字通り背水の陣とも言える状況でしょう。
国の財政難によって運営費交付金などの研究予算が絞り込まれる中、大学自らが「稼ぐ力」を身につけることは、もはや生存条件と言っても過言ではありません。これは、企業との共同研究や特許料、さらには大学発スタートアップの支援を通じて自律的な資金源を確保することを指します。もはや象牙の塔に籠もる時代は終わり、社会と密接に関わることが求められているのです。
加速する産学連携の波と九工大のアイデンティティ
先行する他大学の動きは非常にスピーディーです。京都大学は投資子会社を通じてベンチャー支援を強化し、東京大学のキャンパス内には大手メーカーが研究拠点を開設するなど、産学の垣根は急速に消滅しつつあります。九州圏内でも、九州大学や長崎大学が製薬会社と手を組むなど、地域を挙げたイノベーションの火種が各所で燃え上がっている様子が分かりますね。
SNS上では、こうした大学の変革に対して「地方大学の知見がビジネスに繋がるのはワクワクする」「研究資金が潤沢になればさらなる技術革新が期待できる」といった前向きな反応が目立ちます。一方で、基礎研究の軽視を懸念する声もあり、実学と学問のバランスをどう保つかが、今後の議論の焦点になるのではないでしょうか。私個人としても、この挑戦は地域経済の活性化に不可欠だと確信しています。
九州工業大学のルーツを辿れば、筑豊の石炭王・安川敬一郎氏らの私財によって設立された工業専門学校に行き着きます。産業界の要請から誕生したという稀有な歴史を持つからこそ、同大学が産学連携でリーダーシップを取ることは、ある種の宿命なのかもしれません。GYMLABO(ジムラボ)のような共創拠点に留まらず、次代を切り拓く同校の躍進から目が離せません。