日本の就職活動シーンが、今まさに大きな転換点を迎えようとしています。厚生労働省は2019年09月20日、企業が学生を採用する際に開示すべき情報のあり方を見直すため、専門家による検討会を始動させました。この動きは2015年に施行された「若者雇用促進法」が5年という節目を迎えるにあたり、現行制度の効果を検証するとともに、現代の労働環境に即した形へとアップデートすることが目的です。
今回の議論において避けて通れないのが、就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリアが引き起こした「内定辞退率」の予測販売問題でしょう。学生の同意を十分に得ないまま、AIを用いたデータ解析結果を企業に提供していたこの騒動は、社会に大きな衝撃を与えました。テクノロジーが進歩する一方で、個人の尊厳やプライバシーをどう守るかという課題が浮き彫りになっており、行政としても看過できない事態に発展したのです。
ネット上のSNSでは「自分のデータが勝手に売られるのは恐怖でしかない」「ブラック企業を見極めるための情報をもっと開示してほしい」といった切実な声が溢れています。就活生にとって、一生を左右するかもしれない企業選びにおいて、情報の透明性は命綱とも言えるでしょう。厚労省がこのタイミングで重い腰を上げたことは、データ社会における個人の権利保護を求める世論に応える形になったと言えるのではないでしょうか。
ミスマッチを防ぐ「若者雇用促進法」の役割と今後の展望
そもそも「若者雇用促進法」とは、若者が自分に合った職場を適切に選択できるよう、企業に対して一定の情報公開を義務付ける法律です。具体的には、新卒採用を行う企業に対し、従業員の平均勤続年数や残業時間の状況、さらには研修制度の内容といった多岐にわたるデータの提供を求めています。これはいわゆる「ミスマッチ」、つまり入社後に「こんなはずではなかった」と後悔して早期離職してしまう悲劇を防ぐための防波堤です。
2019年10月からは、労働者側や経営者側、そして大学などの教育機関から広くヒアリングを実施する予定となっております。現場の生の声を取り入れることで、形式的な情報公開に留まらない、より実効性の高いルール作りが期待されるでしょう。私は、単なる数字の羅列ではなく、企業の社風や実際の働き方が可視化される仕組みこそが、これからの少子高齢化社会における人材確保の鍵になると確信しています。
今後のスケジュールとしては、リクルートキャリアなどの民間事業者への聞き取りを経て、2020年05月までには議論の報告書がまとめられる見通しです。その後、2020年の秋頃には労働政策審議会にて具体的な法改正に向けた本格的な審議がスタートするでしょう。企業と学生が対等な立場で向き合い、信頼に基づいたマッチングが行われる健全な就職市場の構築に向け、今回の検討会が果たす役割は極めて大きいと予測されます。