北朝鮮の外貨獲得術に迫る!制裁下の「カツラ・絵画輸出」が支える中朝貿易の裏側と市民の窮状

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2019年09月23日、中朝国境の街・中国遼寧省丹東市を取材すると、国際社会による経済制裁に苦しむ北朝鮮の切実な生存戦略が浮かび上がってきました。国連安全保障理事会の制裁決議により、2018年の貿易総額は前年から半減という衝撃的な数字を記録しています。しかし、その一方で貿易全体に占める中国の割合は95.8%と過去最高に達しており、北朝鮮が中国への依存を極限まで深めている現状が浮き彫りになりました。

かつての主力輸出品であった石炭の輸出額が9割以上も激減した今、北朝鮮が死守しようとしているのは制裁対象外となっている「軽工業品」の輸出です。丹東で商社を営む男性によれば、平壌のメーカー幹部から「労働力はいくらでもあるので、どんどん発注してほしい」という悲痛なまでの営業攻勢を受けているといいます。数千人の従業員を抱えながらも、仕事がないために労働力が余り、外貨獲得のチャンスに飢えている様子が伝わってきます。

具体的に輸出を伸ばしているのが、カツラやつけまつげといった製品です。これらは「委託加工」と呼ばれる形態で生産されています。委託加工とは、原材料を外部から提供し、加工賃を得る生産方式を指します。中国から送られた人毛や人工毛を使い、北朝鮮の労働者が手作業で丹念に仕上げていくのです。統計によると、これら製品の2018年の輸出額は前年比で約1.6倍に急増しており、貴重な収入源となっていることが分かります。

カツラの製作は非常に緻密な作業で、熟練の職人でも1日に1.5個ほどしか作れないといいます。1個あたりの納入価格は約200円と決して高くはありませんが、人件費の安さを武器に薄利多売で外貨を稼ぎ出しています。SNS上では「私たちの知らないところで北朝鮮製のカツラが流通しているのか」といった驚きの声や、「そこまでして外貨を稼がなければならない体制の歪みを感じる」といった複雑な反応が寄せられています。

美術品が外貨に変わる?制裁を潜り抜ける「絵画輸出」の実態

カツラと並んで注目されているのが、北朝鮮製の「絵画」です。北朝鮮では美術大学の出身者が技術レベルに応じて厳格に等級分けされており、国家レベルで美術品の制作を推進しています。かつて制裁対象に指定された美術制作団体「万寿台創作社」も、複数の会社を介して制裁を回避しながら、中国やマレーシア向けに風景画や動物画の輸出を継続しているようです。画家の月収は4千元ほどで、現地の水準では高収入の部類に入ります。

丹東市内には北朝鮮の絵画を専門に扱う大型の画廊が増加しており、1枚あたり数千元から数万元で取引されています。画廊関係者は「中国製に比べて価格は10分の1以下だが、技術力は非常に高い」と太鼓判を押します。もともとプロパガンダ(政治的な宣伝活動)のための看板制作で培われた描写力が、皮肉にも外貨稼ぎの強力な武器となっているのです。芸術が政治の道具としてだけでなく、経済の命綱となっている事実に驚きを隠せません。

しかし、こうした一部の輸出産業の奮闘とは裏腹に、一般市民の生活は限界に達しています。2019年07月に平壌を訪れた旅行者の目撃談によれば、街の中心部ですら道路は陥没したままで、建設が凍結された住宅が無残な姿をさらしていたといいます。何より痛ましいのは、街を行き交う人々が皆一様に痩せ細っていたという証言です。制裁の重圧は、指導部ではなく、真っ先に最も弱い立場にある市民の生活を直撃しているのです。

筆者の個人的な見解としては、どれほど巧みに制裁の網を潜り抜けて外貨を稼いだとしても、それはあくまで一時しのぎの延命策に過ぎないと感じます。カツラ1個200円という労働の対価で国家を支える構造には無理があり、市民の疲弊はもはや隠しきれないレベルに達しています。国際社会との対話を通じた根本的な解決がなされない限り、市民の笑顔が戻る日は遠いと言わざるを得ません。一日も早い状況の改善を願うばかりです。

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