アジア地域の経済成長に、少しばかり足踏みの気配が見えてきました。アジア開発銀行(ADB)は2019年09月25日、アジアの新興45カ国・地域における今年の国内総生産(GDP)成長率見通しを、前回から0.3ポイント引き下げて5.4%になると発表したのです。GDPとは、その国の中で一定期間に生み出された付加価値の合計であり、いわば「国の稼ぐ力」を示すバロメーターですが、その勢いが鈍化していることが浮き彫りになりました。
今回の予測修正に大きな影響を与えたのは、長期化するアメリカと中国の貿易摩擦に他なりません。世界をリードする二大巨頭の対立は、製品を外へ売り出すことで成長してきた輸出中心の国々にとって、非常に大きな痛手となっています。SNS上でも「サプライチェーンの分断が怖い」「iPhoneや家電の価格に響くのでは」といった不安の声が広がっており、消費者のマインドにも冷や水を浴びせる形となったのでしょう。
世界経済の不透明感とアジアが直面する試練
輸出依存度の高い国々にとっては、まさに正念場といえる状況が続いています。貿易摩擦によって関税が引き上げられれば、それだけ商品の競争力が失われ、企業の生産活動は停滞を余儀なくされるからです。ADBがこのタイミングで見通しを下方修正したことは、楽観視できない市場の現状を如実に反映しています。これまでの爆発的な成長期から、安定性を模索する調整局面へと移り変わっているのかもしれません。
筆者の視点としては、この停滞を単なる「衰退」ではなく、経済構造の転換点と捉えるべきだと考えます。安価な労働力による輸出モデルに限界が見え始めた今こそ、域内の内需拡大やデジタル化への投資が不可欠でしょう。目先の成長率に一喜一憂するのではなく、いかにして摩擦に強い強靭な経済基盤を築くかが、今後のアジア諸国に課せられた宿題です。ピンチをチャンスに変える粘り強さに、今は期待したいところですね。