空の上で育む一期一会の対話。ロバート・キャンベル氏が綴る「見知らぬ人」と心を通わせる旅の醍醐味

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飛行機という閉ざされた空間は、日常から切り離された不思議な静寂に包まれています。日本文学研究者として知られるロバート・キャンベル氏は、空の旅を重ねるごとに、スマートフォンの中に書き溜められるメモの数が増えていくといいます。機内という特殊な環境で、誰にも邪魔されず思考の赴くままに行を埋めていく作業には、抗いがたい快楽が宿っているのでしょう。

執筆活動やメディア出演で多忙を極めるキャンベル氏にとって、フライトの時間は単なる移動手段ではありません。2019年09月のある日、青森へと向かう便の中で、彼は予期せぬ心温まる体験をしました。それは、隣り合わせた見知らぬ乗客との間で交わされた、穏やかな会話のひとときです。目的地へ向かう高揚感とともに、機内には特別な交流の種が蒔かれていたのです。

SNS上では、このエピソードに対して「移動中の偶然の出会いこそ旅の宝物だ」という共感の声が多く寄せられています。デジタルデバイスに囲まれ、効率ばかりが重視される現代において、あえて「見知らぬ誰か」と言葉を交わすゆとりは、多くの人の心に新鮮な感動を与えたようです。見ず知らずの人と繋がることへの不安を超えた先にある、人間味あふれる交流が人々の関心を集めています。

ここで言う「一期一会」とは、一生に一度限りの出会いを大切にしようという茶道の心得に由来する言葉です。キャンベル氏は、まさにこの精神を機内で体現されたのではないでしょうか。プロムナード(散歩道)のようにゆったりとした思考の歩みのなかで、偶然隣り合った人と人生の断片を共有することは、私たちの凝り固まった視点を優しく解きほぐしてくれる貴重なスパイスとなるはずです。

私は、こうした「目的のない会話」こそが、成熟した社会を維持するために不可欠な要素であると考えます。相手の肩書きや素性を知らないからこそ、利害関係抜きで純粋な言葉を交わせるのではないでしょうか。効率化が進む航空業界ですが、機内での偶発的なコミュニケーションがもたらす心の豊かさまでを、テクノロジーで代替してしまわないことを願ってやみません。

2019年09月25日に公開されたこの物語は、旅の本質が「どこへ行くか」だけでなく「誰と、どんな言葉を交わすか」にあることを教えてくれます。窓の外に広がる雲海を眺めながら、キャンベル氏がスマホのメモに刻んだのは、きっと温かな人間賛歌だったに違いありません。皆様も次のフライトでは、隣の席の方に軽く会釈をしてみることから、新しい旅を始めてみてはいかがでしょうか。

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