日本経済の根幹を支える「産業のコメ」とも称される鉄鋼業界に、少しばかり冷ややかな風が吹き抜けています。日本鉄鋼連盟が2019年9月24日に発表した統計データによると、2019年8月の国内粗鋼生産量は811万6千トンにとどまりました。これは前年の同じ時期と比較して7.8%もの減少を記録しており、2ヶ月連続で前年実績に届かないという、業界にとってはやや厳しい結果となっています。
ここで注目すべき「粗鋼(そこう)」とは、鉄鉱石を溶かして不純物を取り除き、まだ加工される前の段階にある鋼鉄のことを指します。いわば、あらゆる鉄製品の「原材料」となる状態ですね。SNS上では「五輪が終われば景気が冷え込むと言われていたが、数字として現れ始めたのではないか」といった、将来の景気動向を不安視する声が数多く寄せられており、人々の関心の高さが伺えます。
建設ラッシュの一巡がもたらす鉄鋼需要の変化
今回の生産量減少の大きな要因として、2020年の東京五輪に向けた大規模な建設プロジェクトがひと段落したことが挙げられます。これまで都心を中心に続いていたインフラ整備やスタジアム建設といった「特需」が落ち着きを見せ、国内の建材市場における需要が停滞期に入ったと考えられます。華やかな祭典の準備が進む一方で、その裏側を支える素材供給の現場では、次なる成長の糸口を模索する局面を迎えているのでしょう。
私自身の見解としては、この減少を単なる衰退と捉えるのではなく、構造改革のチャンスと見るべきだと考えています。五輪需要という「ボーナスタイム」が終了した今、鉄鋼メーカーには高付加価値製品へのシフトや、海外市場のさらなる開拓が求められています。SNSでは「これからは量より質の時代だ」という前向きな意見も見受けられますが、まさに技術力の日本がその真価を問われる、非常に重要な分岐点に立たされていると言えるでしょう。