まるでスマートフォンのように、購入した後の自動車がどんどん賢くなっていく。そんな驚きの体験が、今まさに日本のモータリゼーションを変えようとしています。日産自動車やホンダをはじめとする国内メーカーが、車のソフトウェアを無線通信で書き換える最新技術の導入を急ピッチで進めており、私たちのカーライフは大きな転換点を迎えているのです。
SNS上では「ディーラーに行かずに機能が増えるなんて魔法みたい」「常に最新の安全技術が使えるのは心強い」といった期待の声が溢れています。これまで、ナビの地図更新といえば販売店で長時間かけて作業してもらうのが当たり前でしたが、その常識は過去のものになろうとしています。車を所有しながら進化させる、新しい時代の幕開けと言えるでしょう。
無線で車をアップデートする「OTA」の衝撃
ここで注目したいのが「OTA(オーバー・ジ・エア)」という画期的な技術です。これは、無線通信を経由して車載システムのソフトウェアを自動的に更新する仕組みを指します。従来のように物理的な接続を必要とせず、メーカーが配信するデータを直接受け取れるため、不具合の修正や新機能の追加が驚くほどスムーズに行えるようになるのが最大の特徴です。
日産自動車は、2019年09月17日に発売した新型「スカイライン」の特定車種において、このOTAをいち早く取り入れました。特に目玉となっているのが、高速道路でのハンズオフ(手放し運転)を可能にする高度な運転支援システムです。これを支えるために、道路の傾斜やカーブの曲がり具合まで緻密に再現した「3次元地図情報」を常に最新の状態へ保つことが不可欠となっています。
地図が古ければ、せっかくの高度な運転支援もその真価を発揮できません。しかし、OTAがあれば道路の白線位置や看板の変更といった微細な情報もリアルタイムに近い形で反映されます。マツダも2019年10月からコネクテッドサービスを通じて地図更新にこの技術を投入する予定であり、走行の安全性と利便性は飛躍的に向上していくと予測されます。
走行制御まで進化させるホンダと世界の猛追
さらに一歩踏み込んだ展開を見せているのがホンダです。同社は2017年に北米でナビの不具合修正にOTAを活用し始めましたが、2020年中には、車の基本性能である「走る・曲がる・止まる」といった走行制御システムへの導入を目指しています。これにより、納車後であってもエンジンの吹け上がりやハンドリングの特性を最適化できる可能性が広がります。
世界に目を向けると、米国のテスラがこの分野で圧倒的な先行を見せています。彼らは年間で数十回もの更新を行い、自動運転支援からエンターテインメント機能までを網羅しています。また、ゼネラル・モーターズ(GM)も2019年05月に、2023年までにほぼ全車種へOTAを搭載すると宣言しました。中国メーカーも含め、世界規模で「ソフトウェア重視」の車作りが加速しています。
自動車業界では現在、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)と呼ばれる変革期にあります。これまでは数年に一度のモデルチェンジでしか得られなかった新機能が、これからは毎月のように追加されるかもしれません。編集者としては、車が「完成品を買うもの」から「共に成長するもの」へと定義が変わる瞬間に立ち会っているのだと強く実感しています。