2019年09月25日現在、日本の食卓に並ぶ生鮮果実の勢力図が大きく塗り替えられようとしています。環太平洋経済連携協定(TPP)の発効や為替の円高傾向が追い風となり、海外から安価で高品質なフルーツが続々と上陸しているためです。この輸入ラッシュに対し、国内の主要産地からは悲鳴に近い警戒の声が上がっており、農業界全体に緊張感が走っています。
青森県弘前市の「JAつがる弘前」は、夏場に輸入品の流通が拡大することで、これまで安定していた貯蔵リンゴの需要が冷え込むことを懸念しています。また、長野市の「JA全農長野」も、貯蔵品の消費停滞が秋に収穫される新物の卸売価格に悪影響を及ぼすと予測しました。こうした産地の不安は、SNS上でも「スーパーで輸入物ばかり選んでしまう」といった消費者の声と相まって、大きな議論を呼んでいるようです。
ここで言う「貯蔵リンゴ」とは、秋に収穫した果実をCA(空気組成)貯蔵という特殊な技術で鮮度を保ち、翌年の夏まで出荷する仕組みを指します。一方、ブドウの銘醸地として知られる山梨県の「JAフルーツ山梨」の担当者は、増産が難しい国内の現状において、これ以上の輸入増は死活問題だと指摘しました。農家の高齢化や後継者不在による離農は深刻で、国産の生産量は伸び悩む一方なのです。
生き残りをかけた戦略として、山梨県では種がなく皮ごと食べられる高級品種「シャインマスカット」のような、付加価値の高いブランド品の育成に注力しています。安価な海外製品と価格で競うのではなく、圧倒的な品質で差別化を図る狙いでしょう。利便性を求める消費者のニーズに応えるべく、コンビニエンスストアなどの「中食(なかしょく)」市場の開拓も、今後の国産果実が歩むべき重要な鍵となります。
私は、この現状は日本の農業が「選ばれる存在」へと進化するための試練だと考えます。単に安さを追求する輸入果実に対し、日本の職人気質な栽培技術が生み出す「食べる宝石」のような果実は、世界に誇れる文化です。SNSの拡散力を味方につけ、若年層にその価値を再認識してもらうことが、令和の時代における産地再生の突破口になるのではないでしょうか。