2019年6月16日、京都府警は、特殊詐欺対策で得た情報を悪用し、高齢男性から多額の現金をだまし取ったとして、山科警察署の巡査長である高橋龍嗣容疑者(38)を詐欺の疑いで逮捕しました。特殊詐欺(とくしゅさぎ)とは、オレオレ詐欺や還付金詐欺など、対面せずに電話やメールなどを使い、言葉巧みに被害者を信じ込ませて金銭をだまし取る犯罪の総称です。その対策を担うべき警察官自身が詐欺を働いたという事実は、市民の信頼を根底から裏切る、極めて重大な事態と言えるでしょう。
逮捕容疑は、高橋容疑者が2018年11月頃、「現金を預かって保管する」などと嘘を言い、京都市伏見区に住む無職の78歳男性から、合計1,180万円という巨額の現金をだまし取ったというものです。捜査関係者によると、高橋容疑者は当時、伏見警察署管内の交番に勤務しており、今回の事件のきっかけは、男性が金融機関で高額の現金を引き出そうとしたことにあります。金融機関側が特殊詐欺の被害を疑い警察に通報し、現場に駆け付けた高橋容疑者が対応した際に、男性の資産状況などの情報を把握したとされています。
この情報に基づき、後日、男性に連絡を取り、「こちらでお金を保管するので用意してください」などと持ちかけ、男性を騙したとみられています。高橋容疑者は「金を借りただけで、だますつもりはない。投資に使った」などと容疑を否認しているようですが、市民の安全を守るべき立場にある警察官による犯行に、京都府警の姫野敦秀首席監察官は「府民の信頼を損ねるもので、言語道断。厳正に対処する」と強い非難のコメントを出されました。
情報悪用の手口と特殊詐欺対策の重要性
今回の事件で注目すべき点は、金融機関での**「声掛け」が発端となっていることです。高額な現金の引き出しや振り込みを行う利用者に対して、金融機関が目的などを確認し、特殊詐欺の被害を疑って警察に通報するこの取り組みは、特殊詐欺被害を水際で食い止める非常に有効な手段とされています。警察庁のデータによると、2018年の特殊詐欺の被害額は約363億9千万円に上りますが、声掛けなどによって阻止できた被害額は約143億1千万円にもなるそうです。この数字を見れば、金融機関の積極的な関与がいかに重要であるかが理解できます。
しかし、本件は、その有効な対策の現場で知り得た「個人情報」や「資産状況」という機密性の高い情報を、警察官自らが悪用するという、前代未聞の事態となりました。特殊詐欺の被害者は、多くの場合、高齢者であり、その心理的な隙や不安につけ込むのが常套手段です。警察官という、信頼を寄せられるべき公的な立場が悪用されたことは、被害男性の精神的な打撃も計り知れないでしょう。捜査は山科警察署や容疑者宅への家宅捜索も行われ、全容解明が急がれます。
SNSでの反響と再発防止への提言
このニュースが報じられると、SNS上では「信じられない裏切りだ」「警察官が特殊詐欺を仕掛けるなんて言語道断」「これでは誰を信じればいいのか」といった、怒りや落胆の声が多数見られました。特殊詐欺の被害が社会問題化している中で、その対策の最前線にいるべき人物が犯罪に手を染めたことは、社会全体に大きな衝撃と不信感を与えています。市民が警察に寄せる信頼は、公権力として適正に職務を遂行するという前提のもとに成り立っています。今回の事件は、その大前提を大きく揺るがすものと言えるでしょう。
私見ですが、今回の事件を単なる一警察官の不祥事として終わらせてはならないと考えます。特殊詐欺対策の情報管理体制の厳格化はもちろんのこと、警察官の倫理教育の徹底と、犯罪に手を染めにくい職場環境の整備が急務です。また、高額な現金を引き出す際に、警察官が介入する場合の「第三者による複数体制での対応」や「情報共有の厳格なルール化」**など、不正を防ぐためのシステム的な対策も真剣に検討されるべきです。この逮捕劇を教訓に、京都府警には信頼回復に向けた強い姿勢を示すことを期待したいです。