厚生労働省が自殺対策の一環として実施している、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を利用した相談事業で、2018年度の相談件数が延べ2万2,725件という、非常に大きな数に達したことが2019年6月15日に判明いたしました。この驚くべきデータは、同省がまとめた2019年版の自殺対策白書に記載され、間もなく閣議決定される見通しです。この結果は、多くの人々がインターネットを介して悩みや苦しみを打ち明けているという、現代社会の新たな傾向を浮き彫りにしています。
特に目を引くのは、相談者を年齢層別に見ると、未成年が全体の44パーセントを占め最も多く、それに20代が41パーセントで続いている点です。このことから、10代から20代といった比較的若い世代が、SNSというツールを自身の悩みや生きづらさを相談する窓口として強く求めている実情が伝わってまいります。また、性別で見ると女性が92パーセントと、男性の8パーセントを大きく凌駕しており、女性たちの抱える心の負担や、相談へのアクセスのしやすさが影響している可能性も考えられるでしょう。
利用されたSNSの種類別では、若者を中心に広く普及しているコミュニケーションアプリであるLINE(ライン)が、1万9,412件と全体の8割以上を占めています。次いでチャットが3,108件、その他が205件という内訳です。日頃から使い慣れたLINEであれば、深刻な状況下でも比較的抵抗なく相談に踏み切りやすいのかもしれません。これらの数字は、デジタルネイティブ世代にとって、対面や電話ではなく、慣れ親しんだオンライン上のチャネルこそが、最も身近で信頼できるセーフティネットになりつつあることを示していると言えるでしょう。
相談内容について詳しく見ていきますと、1件の相談の中に複数の内容が含まれるケースも多いため、合計件数は3万5,104件にも上りました。このうち、最も多かったのは「メンタル不調」に関するもので8,282件(24パーセント)でした。「メンタル不調」とは、精神的な健康状態が優れない状態を指す専門用語であり、うつや不安、ストレスなど、心に負担がかかっている状態を広く含みます。この結果から、多くの相談者が、何よりも自身の心の状態に苦しんでいることが分かります。
「メンタル不調」に次いで多かったのは、「自殺念慮」に関する相談で7,012件(20パーセント)です。「自殺念慮」とは、実際に自殺を図る意思の有無に関わらず、「死にたい」と考えてしまうこと、つまり自殺を考えるに至る状態のことです。この数字は、相談窓口が、生命の危機に瀕した人々の「最後の砦」として機能していることを物語っています。さらに「家族」に関する相談が3,879件(11パーセント)、「学校」に関する相談が2,993件(9パーセント)、「勤務」に関する相談が2,214件(6パーセント)と続いており、生活を取り巻く様々な環境が相談のきっかけになっている様子が読み取れるのです。
一方で、文部科学省が2018年4月から12月にかけて、全国30の自治体の児童生徒を対象に実施したSNS相談事業には、1万1,039件の相談が寄せられました。こちらは、学校生活における特有の悩みが顕著に現れており、「友人関係」が22パーセントで最多となりました。そのほか、「学業・進路」と「いじめ問題」がそれぞれ10パーセント、「心身の健康・保健」が8パーセントという結果になっています。学校という閉鎖的な環境の中で、若者たちは友人や学業、そして深刻ないじめといった問題に直面し、その解決策をオンラインに求めていると言えるでしょう。
今回の厚生労働省による調査結果に対して、SNS上でも大きな反響が見受けられます。「SNSでの相談が2万件を超えた事実は、それだけ多くの人が身近に相談できる人がいないということの表れではないか」「若者や女性が抱える生きづらさが数字に表れている」といった、現代社会の課題を指摘する声が多く見受けられます。また、「相談窓口の存在を知ることができてよかった」「もっと気軽に相談できる場所が増えてほしい」と、SNS相談事業の重要性を再認識する意見も多く寄せられました。
私見ではございますが、この2万件を超える相談件数は、決してネガティブな数字として捉えるべきではないと考えます。むしろ、自殺という最悪の事態を防ぐための「SOS」を、これまで声にできなかった人々が、SNSという新しい手段を得て発信できるようになった証拠とも言えるでしょう。もちろん、根本的な社会の課題解決が最重要ですが、まずはこの貴重な声に真摯に耳を傾け、より専門的で質の高い支援を、デジタル空間でも途切れることなく提供していくことが、私たち大人に課せられた責務ではないでしょうか。匿名性が確保され、場所や時間に縛られないSNS相談の体制をさらに充実させることが、今後ますます重要になっていくに違いありません。