長野県宮田村に拠点を置く信濃工業が、製造業界に新たな風を吹き込もうとしています。2019年9月25日現在、同社は炭素繊維強化プラスチック、通称「CFRP」を用いた大型パイプの需要急増に対応するため、戦略的な新工場の建設を急ピッチで進めています。この新拠点は2020年2月の稼働を予定しており、液晶テレビ用フィルム製造の現場で不可欠な存在となるでしょう。
SNS上では「地元の名門企業が攻めの姿勢を見せているのは心強い」「カーボン技術の応用力がすごい」といった期待の声が寄せられています。1972年の創業以来、ゴルフシャフトや釣り竿の量産で培われた同社の技術力は、今や産業界の屋台骨を支えるレベルに達しました。かつてスポーツ用品で一世を風靡した同社が、その知見を工業用製品へと見事に昇華させた姿には、ものづくりの真髄を感じずにはいられません。
鉄の10倍の強度を誇る「CFRP」が変える産業の常識
ここで注目すべきは「CFRP(炭素繊維強化プラスチック)」という素材の圧倒的なポテンシャルです。青木拓社長の言葉を借りれば、この素材は鉄と比較して強度が約10倍もありながら、重量はわずか4分の1という驚異的な特性を持っています。非常に軽くて頑丈、さらに腐食しにくいという夢のような素材ですが、その加工には高度な技術が要求されるのが一般的です。
特に液晶テレビの製造工程では、コスト削減のためにフィルムの大型化が進んでおり、それを巻き取るパイプにも巨大さが求められています。しかし、従来の金属製パイプでは5メートルから10メートルという長さになると、自重で両端がたわんでしまうという物理的な限界がありました。そこで、強靭でたわみの少ない同社のCFRP製パイプが、業界の救世主として大きな注目を集めているのです。
5億円の投資で描く2021年への成長戦略
2019年4月に着工した新工場は、総投資額約5億円という大規模なプロジェクトです。延べ床面積は約2000平方メートルに及び、これまで宮田村内に分散していた生産機能を再編するハブとしての役割を担います。素材の切断から加工まで、複雑に分かれていた工程を集約することで、物流の効率化と生産性の飛躍的な向上を目指す計画となっており、企業の合理化精神が光ります。
新工場稼働後の2021年5月期には、売上高を現在の約7億円から10億円規模へと引き上げる意欲的な目標を掲げています。既存の工場では医療用機械部品などの成長分野を強化する方針もあり、多角的な成長シナリオが描かれています。地方から世界へ、独自開発の製造機械を武器に戦う信濃工業の挑戦は、日本の製造業が歩むべき一つの理想形を示していると言えるでしょう。