経営再建の渦中にあるジャパンディスプレイ(JDI)は、2019年6月12日、驚きのトップ交代と事業構造改革を発表いたしました。業績低迷の責任を取る形で、月崎義幸社長(59歳)が9月末をもって辞任することになり、後任として菊岡稔常務執行役員(56歳)が新たなかじ取り役を担います。この人事には、日立製作所出身で、車載事業での実績を評価され2018年6月に社長に就任した月崎氏への、期待が大きかっただけに、わずか1年3カ月余りでの交代に、市場関係者からは厳しい声が上がっています。
今回の発表の焦点の一つが、主力の白山工場(石川県白山市)の稼働停止という、極めて大胆な一手です。スマートフォン向け液晶パネル、LCD(Liquid Crystal Displayの略称で、電子機器のディスプレイなどに使われる表示装置のこと)の需要が世界的に落ち込んでいることを受け、2019年7月から当面、操業をストップし、生産拠点を茂原工場(千葉県茂原市)などに集約する判断を下しました。特に白山工場は、主要顧客である米アップル社のiPhone向けパネル生産を担い、2016年末に量産を開始したものの、需要の落ち込みで稼働率(設備や工場などが実際に稼働している割合を示す指標)が低迷していた状況です。これにより、JDIは2019年3月期に747億円の減損損失(資産の収益性が低下し、投資額を回収できないと見込まれる場合に、帳簿上の価格を引き下げる会計処理)を計上していましたが、2020年3月期にも追加で減損損失を計上する可能性が出てきています。白山工場の再稼働の有無については、今後の需要の動向を慎重に見極め、9月末までに判断される見込みです。
また、厳しい経営状況を乗り切るための大規模な人員削減策も打ち出されました。2019年9月末までを期限とし、単独従業員の3割弱に相当する約1200人の希望退職を募るとのことです。さらに、関連会社のJOLED(ジェイオーレッド)への転籍なども進める方針です。こうした人件費削減策により、年間で約200億円の費用削減効果を見込んでいるといいます。JDIは、2019年5月15日の決算発表時に、1000人規模の人員削減などを6月までに公表すると予告していたため、今回の発表はそれを上回る規模での構造改革への意欲を示す形となりました。
こうした大規模な固定費削減策の強化は、台湾の電子部品メーカーを中心とする台中3社連合から予定されている、最大800億円の金融支援を受け入れるための環境整備の一環と捉えられています。3社連合は、2019年6月14日までに役員会などの機関決定に諮ることをJDIに通知している状況です。JDIもこれを受け、金融支援受け入れなどを正式に決議するための臨時株主総会を9月までに開催する予定だと発表しています。しかしながら、一部関係者の間では、支援計画の実現に向けた最終的な調整がまだ続いているとの見方もあり、支援が確実に行われるかについては依然として不透明な状況が続いています。SNSなどでは、「この規模のリストラはさすがに厳しい」「白山工場、稼働停止は事業の大きな転換点になるのでは」といった、再建の厳しさを指摘する声が多く上がっていました。
新たに社長に就任する菊岡稔氏(きくおか・みのる氏)は、1986年(昭和61年)に東京大学法学部を卒業後、日本興業銀行に入行。2017年にジャパンディスプレイに入社し、2019年からは常務執行役員を務めていました。東京都出身です。銀行出身で財務に精通した新社長が、今回のリストラと工場停止という痛みを伴う改革を断行し、台中3社連合からの支援を確実に得て、JDIの経営再建を成功に導けるのかが、今後の最大の注目点となるでしょう。私は、JDIが持つ優れたディスプレイ技術は日本の重要な財産であると信じていますので、この難局を乗り越え、再度世界市場で輝きを取り戻すことを強く期待したいと思います。