仕事帰りにふらっと立ち寄り、手軽にお酒と食事を楽しむ「ちょい飲み」の聖地として親しまれてきた「熱烈中華食堂 日高屋」。その運営元であるハイデイ日高が、予期せぬ苦境に立たされています。2019年03月から2019年08月期における単独営業利益は、当初の増益予想から一転し、前年同期比で約1割も減少する23億円程度に留まった模様です。1999年の株式公開以来、破竹の勢いで成長を続けてきた同社にとって、中間期の増収記録が途絶えるという歴史的な転換点を迎えています。
この失速の背景には、2019年04月から施行された「働き方改革関連法」の影響が色濃く反映されています。残業時間の上限規制により、会社員が以前よりも早い時間に帰宅するライフスタイルへと変化しました。その結果、日高屋の最大の武器であった夜間のアルコール需要、いわゆる「ちょい飲み」の客足が遠のいてしまったのです。SNS上でも「最近は定時に帰るから、外で飲まずに家でゆっくりすることが増えた」といった声が散見され、消費者の行動様式が構造的に変化している様子がうかがえます。
コスト増と時短営業のダブルパンチが収益を圧迫
さらに深刻なのは、同社自身も働き方改革の波に飲み込まれている点でしょう。深刻な人手不足や労働環境への配慮から、深夜02時まで営業していた店舗を23時30分に切り上げるなど、営業時間の短縮を余儀なくされました。これにより、深夜帯の貴重な収益源が失われる結果となっています。既存店の客数は約3%減少し、新規出店によるカバーも追いつかない状況です。一編集者の視点で見れば、社会全体の「ホワイト化」が、皮肉にも低価格を売りにする外食文化の屋台骨を揺さぶっているように感じられます。
収益を圧迫する要因は、労働環境の変化だけではありません。水道光熱費のじわりとした上昇に加え、2019年03月下旬から実施した生ビールの40円値下げが、原価率を押し上げる要因となりました。一杯290円という驚異的な安さは消費者にとって大きな魅力ですが、経営面では利益を削る「諸刃の剣」となった形です。安さで客を呼ぶ戦略が、人件費高騰という現代の荒波の中で、かつてほどの爆発力を発揮しにくくなっているのかもしれません。
増税後の「価格据え置き」で逆風を跳ね返せるか
目前に迫る2019年10月の消費増税に対し、ハイデイ日高は勝負の一手を投じます。看板メニューの「中華そば」や「餃子」の税込価格を据え置くことで、他社との差別化を図り、離れた顧客を呼び戻す作戦です。一方で、一部のメニューについては10円単位で値上げを行い、全体の採算バランスを整える方針を打ち出しました。2019年09月27日に発表予定の決算内容に注目が集まりますが、2020年02月期の通期予想は据え置く見通しであり、同社の粘り強い経営姿勢が試されています。
個人的な見解を述べさせていただければ、単なる安売り競争の時代は終わりを迎えつつあります。今後は「安さ」だけでなく、限られた時間の中でいかに「選ばれる理由」を作るかが重要になるでしょう。働き方改革という社会のOSが書き換わる中で、日高屋が再びサラリーマンの心強い味方として返り咲くのか、その戦略的な転換に期待せずにはいられません。厳しい状況下ではありますが、日高屋の「庶民の味方」というブランド力は、不況下ほど底力を発揮するはずです。