シェアオフィス業界の革命児として時代の寵児となった「ウィーワーク(WeWork)」を運営する米ウィーカンパニー。そのカリスマ的な象徴であった共同創業者のアダム・ニューマン氏が、2019年09月24日、ついに最高経営責任者(CEO)の座を退くことが決まりました。このニュースは瞬く間に世界を駆け巡り、ビジネス界に衝撃を与えています。
今回の退任劇の裏側には、最大株主であるソフトバンクグループによる、いわば「外堀を埋める」ような周到な動きがあったとされています。SNS上では「ついにこの日が来たか」という驚きの声とともに、一時は470億ドル(約5兆円)とも言われた企業価値の妥当性を問う厳しい意見が相次いでおり、まさに時代の転換点を予感させます。
退任の決定打となったのは、企業統治(ガバナンス)を巡る深刻な問題でした。これは会社が不正を行わず、健全に成長するために管理・監督する仕組みを指しますが、ニューマン氏には公私混同とも取れる不透明な取引が次々と発覚したのです。会社から多額の融資を受ける一方で、自身が所有するビルを会社に貸し出すなど、投資家の不信感はピークに達しました。
こうした状況を、専門用語では「利益相反(りえきそうはん)」と呼びます。これは自分の利益と会社の利益が衝突する状態を意味し、本来守られるべき株主の権利が損なわれるため、上場を目指す企業としては致命的な欠陥でしょう。こうした懸念が拡大した結果、期待されていた株式上場(IPO)も延期せざるを得ない事態へと追い込まれたのです。
ソフトバンクグループの投資戦略が問われる局面へ
これまでウィーカンパニーに対し、累計で100億ドルという天文学的な資金を投じてきたソフトバンクグループにとっても、今回の騒動は計算違いだったに違いありません。ニューマン氏は会長職に留まるとされていますが、経営の第一線からは退く形となります。投資家からは、ソフトバンク流の「巨額資金による急成長」モデルへの疑念も噴出しています。
編集者としての視点ではありますが、どれほど革新的なサービスを提供していたとしても、リーダー個人の独断や不透明な資金運用が許される時代は終わったと感じます。企業が社会的な信頼を得るためには、情熱だけでなく透明性の高い経営体制が不可欠です。今後は新しい経営陣のもとで、損なわれたブランドイメージをどう回復させるかに注目が集まるでしょう。
2019年09月26日現在、ユニコーン企業(評価額が10億ドル以上の未上場企業)のバブル崩壊を危惧する声も強まっています。ウィーワークがこの難局を乗り越え、真に持続可能なビジネスモデルを証明できるのか。ソフトバンクグループの孫正義氏が次にどのような一手を打つのか、私たちはまさに歴史的な分水嶺を目の当たりにしていると言えます。