希望退職の「割増金」は蜜の味?40代・50代が陥る“早期離職”の意外な落とし穴と再就職戦略

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「数千万円の退職金が上乗せされる」——そんな魅力的な条件が並ぶ希望退職のニュースが世間を騒がせています。2019年9月26日現在、日本ハムや富士通、コカ・コーラといった日本を代表する大企業が相次いで希望退職者の募集を実施しました。提示された「特別損失」から算出される1人あたりの割増金は、1,000万円を超えるケースも珍しくありません。SNSでは「これだけ貰えるなら今すぐ辞めたい」という羨望の声がある一方で、「その後の再就職は大丈夫なのか」という不安の声も渦巻いています。

確かに、通帳に刻まれる非日常的な桁数の入金額は、長年会社に尽くしてきたビジネスパーソンにとって、これまでの苦労が報われる「ご褒美」のように感じられるでしょう。しかし、この一時の潤いが、実はキャリアにおける最大の「リスク」に繋がる可能性があることを忘れてはいけません。多額のキャッシュを手にしたことで生まれる精神的な余裕が、再就職への初動を遅らせ、取り返しのつかない空白期間を作ってしまう原因になるからです。

実績あるスペシャリストが直面した「10カ月の空白」という現実

ここで、ある48歳の男性Mさんの事例をご紹介しましょう。彼は大手メーカーで25年間、販促マーケティングの第一線で活躍してきた、いわば「深耕型スペシャリスト」です。展示会で集客し、コールセンターを通じて商談へ繋げる仕組みを構築した実力者でした。しかし、希望退職制度を利用して昨年の9月末に退職した彼は、割増金による心の余裕から「まずは骨休みを」と、昨年末まで本格的な活動を控えてしまいました。この決断が、後の苦戦を招くことになります。

年明けから活動を本格化させたものの、半年間で20社に応募して面接に進めたのはわずか2社。Mさんは「年収900万円以上、残業なし、営業職は不可」という、前職同等の条件を維持しようとしましたが、市場の現実は想像以上にシビアでした。企業側は、理由のない長期の「無業期間」を非常にネガティブに捉えます。どんなに輝かしい実績があっても、現場を離れて10カ月以上経過している事実は、採用担当者の目に「意欲の低下」や「スキルへの懸念」として映ってしまうのです。

「人生100年時代」を生き抜くための悲観的シナリオの重要性

一般的に、希望退職の割増金は「年収の2倍」が相場と言われています。2019年1月の調査では、大卒45歳の平均年収は約528万円ですから、上乗せ分は約1,000万円程度です。一見大金ですが、65歳の年金受給開始まで17年もあることを考えれば、生活を支え続けるには心もとない金額でしょう。私は、今の時代こそ「最も悲観的なシナリオ」を想定し、最悪の事態を防ぐための手を打っておくべきだと考えます。楽観的な見通しは、キャリアの選択肢を狭める毒になりかねません。

もしあなたが希望退職を検討しているなら、退職後3カ月、長くても半年以内には次を決める覚悟を持つべきです。理想は在職中の内定獲得ですが、もし活動が長期化しそうなら、知人の手伝いや短期の契約社員、顧問といった「スポット仕事」で社会との接点を維持するのも一つの手です。空白期間を作らず、常に「必要とされている状態」をキープすることが、精神的な充足感と市場価値の維持に繋がります。お金という数字だけでなく、自分が必要とされる場所を最優先に選んでください。

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