韓国向けフッ化水素の輸出が「ゼロ」に。貿易統計から見る半導体材料の輸出管理厳格化とその影響

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2019年09月27日、財務省から発表された8月の貿易統計(確報)は、日本の産業界に大きな衝撃を与えました。今回の発表によれば、次世代技術の要である半導体製造に欠かせない「フッ化水素」の韓国向け輸出が、数量・金額ともに「ゼロ」という極めて異例の結果を示しています。前年の2018年8月には3378トン、2017年8月にも2590トンの輸出実績があったことを踏まえると、まさに急ブレーキがかかった状態といえるでしょう。

この劇的な変化の背景には、日本政府が2019年07月04日から実施している輸出管理の厳格化措置が存在します。フッ化水素を含む半導体材料3品目の手続きが厳格になったことで、7月の輸出量はすでに前年同月比で82%減の479トンまで縮小していました。そして、今回の統計によって、ついにその供給が一時的に完全に止まった実態が数字として裏付けられた形です。SNS上でも「これほど極端な数字が出るとは」といった驚きの声が広がっています。

そもそも「フッ化水素」とは、半導体の基板となるシリコンウエハーから不要な膜を取り除く「エッチング」工程で使用される極めて純度の高い薬品です。韓国貿易協会のデータによると、同国のフッ化水素輸入における日本産のシェアは約4割を占めており、日本側の高度な精製技術は代えがたい存在となっています。そのため、日本からの供給が途絶えることは、韓国の主力産業である半導体生産ラインにとって死活問題に直結する懸念があるのです。

今回の事態に対し、単なる対立構造として捉えるのではなく、グローバルなサプライチェーンの脆さを再認識すべきだと私は考えます。信頼関係に基づいた管理体制がいかに安定供給の鍵であるかが浮き彫りになりました。一方で、2019年08月末には厳格化後初となる輸出許可が下りたことも判明しており、決して全面的な禁輸を目指しているわけではありません。あくまで適切な手続きを経ることが求められる、新しい通商のフェーズに突入したといえるはずです。

なお、同様に輸出管理が強化された「フッ化ポリイミド」や「レジスト(感光材)」については、今回の統計から正確な動向を読み解くことができません。財務省は、貿易統計の品目分類と今回の輸出審査の見直し対象が必ずしも一対一で対応していないためだと説明しています。フッ化水素ほどの急激な数字の変化は見えにくいものの、半導体業界全体がこの新しい輸出管理体制に対して、固唾をのんで今後の推移を見守っている状況に変わりはありません。

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