企業が利息をもらう時代へ?マイナス金利のCP発行が急増する驚きの金融市場最前線

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日本の金融市場において、これまでの常識を覆すような現象が加速しています。企業が短期的な運転資金を確保するために発行する「CP(コマーシャルペーパー)」において、金利がマイナスとなるケースが続出しているのです。2019年9月27日現在の状況によれば、キリンホールディングスや王子ホールディングスといった日本を代表する大企業が、マイナス0.01%からマイナス0.0001%という驚異的な条件で資金を調達しました。

そもそもCPとは、企業が数ヶ月程度の短い期間でお金を借りるために発行する、いわば「短期の社債」のような無担保の約束手形を指します。通常、お金を借りれば利息を支払うのが当たり前ですが、マイナス金利での発行となれば話は別です。企業はお金を借りているにもかかわらず、逆に利息を受け取ることができるという、かつての経済学では考えられなかった逆転現象が現実のものとなっています。

証券保管振替機構のデータによると、2019年08月31日時点でのCP発行残高は約21兆3000億円という膨大な規模に達しました。市場の関係者の間では、この残高のうち実に3割から4割程度がすでにマイナス金利に沈んでいるとの見方が強まっています。SNS上でも「借りるほど儲かるなんて魔法のようだ」「銀行に預けるよりCPを発行した方が得なのか」といった、驚きと困惑が入り混じった声が数多く寄せられている状況です。

なぜ投資家は、損をすることが分かっていながらマイナス金利のCPを購入するのでしょうか。その背景には、日本銀行が2016年から導入しているマイナス金利政策が深く関わっています。民間金融機関が日本銀行に預けているお金の一部には、マイナス0.1%の金利が課されています。つまり、日銀に預けて0.1%の「罰金」を払うくらいなら、マイナス0.01%のCPを買って損失を最小限に抑えた方が合理的であるという、苦渋の選択が働いているのです。

日銀政策が変える企業の資金調達戦略

この異例の事態は、企業の財務戦略にも大きな変化を及ぼしつつあります。これまで主流だった銀行融資から、よりコストの低い、あるいは「利益」が出るCPによる調達へと切り替える動きが一部で始まっているようです。DICや三越伊勢丹ホールディングス、横浜ゴムといった名だたる企業がこの波に乗っており、格付けの高い優良企業にとっては、まさに市場から「お金をもらって借りる」ボーナスタイムが到来していると言えるでしょう。

私自身の見解としては、この状況は企業の設備投資や事業拡大を後押しするポジティブな側面がある一方で、金融システムの歪みを象徴していると感じざるを得ません。利息という概念が崩壊した世界では、本来淘汰されるべき効率の悪い資金運用が温存されてしまうリスクも孕んでいます。今は低コストでの調達を喜ぶべき局面かもしれませんが、これが長期化した際の市場の自浄作用への影響については、冷静に注視していく必要があるでしょう。

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