2019年10月1日の消費税率引き上げがいよいよ目前に迫り、社会全体に緊張感が漂っています。今回の増税において最も懸念されているのが、立場が弱い中小企業や個人事業主に対し、顧客企業が増税分の価格転嫁を拒む「実質的な値下げ」の強要です。こうした不当な圧力に対し、公正取引委員会は現在、監視の目をかつてないほど厳しく光らせています。
具体的な違反の疑いとして注目されているのが、軽減税率制度を隠れ蓑にしたケースです。例えばスーパーの担当者が納入業者に対し、「魚は8%のままだから、刺身のトレーも8%扱いに据え置いてほしい」と要求する行為が挙げられます。鮮魚自体は軽減税率の対象ですが、包装材であるトレーには10%の税率が適用されるため、この差額を業者に負担させることは明確な法抵触の恐れがあるのです。
転嫁対策特別措置法による厳格な是正勧告と「転嫁Gメン」の増強
2013年10月1日から2019年8月31日までの期間において、公正取引委員会は悪質なケース54件に対して是正勧告を行い、5,456件もの指導を実施してきました。特に「増税前の価格に据え置かせる」という手法が多く見受けられます。最近では2019年9月24日に、大東建託などが物件オーナーへの賃料増税分を反映していなかったとして、過去最多の約30億円に上る未払い税額の再発防止勧告がなされました。
こうした事態を重く見た政府は、2019年度に「転嫁対策調査官(通称:転嫁Gメン)」を約70名増員し、600人体制へと大幅に強化しました。2019年10月からは、全国600万以上の中小企業や個人事業主を対象とした大規模な書面調査が予定されています。大手スーパーをはじめとする、取引上の優位な立場を利用した事業者による身勝手な振る舞いを、徹底的に封じ込める構えです。
SNS上では、「自分の会社も据え置きを打診された」「弱いものいじめはやめてほしい」といった切実な声が数多く寄せられており、この問題への関心の高さが伺えます。私自身の見解としても、増税のしわ寄せを特定の見えにくい場所に押し付ける行為は、健全な経済の循環を阻害する極めて不健全なものです。適正な価格転嫁が行われることこそが、真の意味での公平な市場環境を作り出す鍵となるでしょう。
たとえ税務上で赤字となっている企業であっても、消費者から預かった消費税は必ず国に納付しなければならない義務があります。2014年の増税時には翌年度の滞納額が増加した苦い経験があるため、国税当局も今回の動向を注視しています。事業者の皆様は、公取委が発行するパンフレットなどを活用し、自身の権利を守るための知識を備えておくことが、この激動の転換期を乗り切る最善の策と言えるはずです。