世界の金融市場が低金利の恩恵に沸く一方で、中国企業を取り巻く資金調達環境には冷たい風が吹き荒れています。2019年8月の中国企業によるドル建て債券の発行額は、わずか8億ドル(約860億円)にとどまりました。これは過去1年間の月間平均と比較して、わずか2割という驚くべき急減ぶりです。世界的な社債発行ラッシュとは真逆を行くこの動きは、中国経済の内抱するリスクを浮き彫りにしています。
この急ブレーキの最大の要因は、深刻な「元安」の進行にあります。2019年8月、人民元相場は1ドル=7元の節目を突破し、一時11年半ぶりの安値を記録しました。ドル建てで借金をしている企業にとって、元安は返済負担が雪だるま式に膨らむことを意味します。せっかく調達しても、返すときにはより多くの元が必要になるため、多くの企業が発行をためらわざるを得ない状況に追い込まれているのです。
市場では「デフォルト」への警戒感も最高潮に達しています。デフォルトとは、企業が利息や元本の支払いを約束通りに実行できなくなる「債務不履行」の状態を指します。2019年9月中旬までに、中国国内の元建て社債のデフォルト額はすでに900億元(約1兆3600億円)を突破しました。これは過去最悪だった昨年のペースに並ぶ勢いであり、投資家たちが中国銘柄に対して極めて慎重な目利きを始めている証拠と言えるでしょう。
具体的な動きとして、香港上場の不動産会社である瑞安建業は、2019年9月24日にドル債の発行見送りを発表しました。年利6.2%という高条件を提示したものの、投資家の需要を十分に集めることができなかったようです。また、投資大手の中国民生投資も2019年8月に満期を迎えた5億ドルの償還ができず、支払い期限の延長を要請するなど、大手企業ですら資金繰りは「綱渡り」の状態が続いています。
SNS上では「中国バブルの崩壊がいよいよ現実味を帯びてきた」「不動産会社の高金利が異常すぎる」といった不安の声が広がっています。実際、一部の不動産会社は資金確保のために10%を超える異常な高金利を提示せざるを得ない状況です。編集部としては、この資金調達の難航が単なる一過性の現象ではなく、中国経済全体の成長を力強く押し下げる深刻な構造的問題に発展しつつあると危惧しています。
迫りくる償還のピークと出口の見えない米中対立
さらに懸念されるのは、これから本格化する「借金返済」のラッシュです。2019年10月から12月にかけて、中国企業が過去に発行したドル債の償還額は約180億ドルにのぼります。2020年には約350億ドル、2021年も約320億ドルの満期が控えており、まさにこれからが正念場です。新たな借り入れが困難な中でこの巨額返済をどう乗り切るのか、企業の体力が激しく試されることになるでしょう。
この状況に追い打ちをかけるのが、出口の見えない米中貿易摩擦です。2019年10月に予定されている閣僚級協議の結果次第では、さらなる元安が進行する恐れがあります。中国当局が輸出を支えるために元安を容認すれば、企業のドル債返済はさらに困難を極めます。過剰な債務への規制も強化される中で、中国企業はまさに「内憂外患」の苦境に立たされており、投資家はこれまで以上にシビアな視点を持つ必要があるでしょう。