NZ乳業の巨人フォンテラが直面する「世界戦略」の光と影。過去最大の赤字から読み解く中国ビジネスの難所と教訓

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ニュージーランド(NZ)が世界に誇る乳業の巨人、フォンテラ社がいま、かつてない荒波に揉まれています。2019年9月26日に発表された2019年7月期の決算は、最終損益が6億500万NZドル(約400億円)という衝撃的な赤字を記録しました。これは同社にとって過去最大の欠損であり、これまでの積極的な海外投資がいかに厳しい局面を迎えているかを如実に物語っています。

このニュースに対し、SNSでは「NZの宝であるフォンテラがここまで苦戦するとは」「中国市場の特殊性はやはり恐ろしい」といった驚きと懸念の声が広がりました。長年、ネスレやダノンといった世界のメガフード企業に比肩する存在を目指してきた同社ですが、その野心的な拡大路線は今、大きな曲がり角に立たされています。マイルス・ハレルCEOも、かつての自画像が過信であったことを認めざるを得ない状況です。

「NZ流」が通じなかった中国市場の壁

最大の誤算は、売上高の2割を占める最重要拠点、中国での生乳生産事業でした。2019年7月期、この事業は営業利益ベースで1400万NZドルの赤字を垂れ流しています。ここで言う「生乳(せいにゅう)」とは、搾ったままで加熱殺菌処理などを行っていない牛の乳のことですが、この鮮度が命の産品を現地で生産しようとした試みが、多額のコスト増を招く結果となりました。

ニュージーランドの強みは、広大な土地を活かした低コストな「放牧」にあります。しかし、中国の気候や環境では同様の手法が通用せず、輸入飼料に頼らざるを得ない高コスト体質から抜け出せませんでした。最先端のノウハウを移植すれば勝てると信じた「NZ流」のプライドが、現地の厳しいリアリティによって打ち砕かれた形と言えるでしょう。

さらに、10年以上前に起きた有害物質混入事件や、出資先である粉ミルクメーカー「貝因美(ビーインメイ)」がネット通販への移行に乗り遅れたことも追い打ちをかけました。私は、この失敗の本質は「自社の強みの過信」にあると考えます。自国で成功したモデルが他国でもそのまま通用するという考えは、グローバルビジネスにおいて最も警戒すべき落とし穴ではないでしょうか。

原点回帰へ!「守護者」としての再起

業績の急速な悪化を受け、2019年1月には6.6NZドル台だった株価は、現在3NZドル台前半まで落ち込んでいます。わずか1年半余りで価値が半減するという事態は、投資家からの厳しい審判そのものです。これを受け、ハレルCEOはブラジル事業の売却検討やオーストラリアの工場閉鎖など、矢継ぎ早に「選択と集中」の改革を打ち出しています。

ここで重要なのは、同社が「世界的な食品メーカー」という虚像を捨て、本来の「酪農協同組合」としてのアイデンティティを取り戻そうとしている点です。NZの酪農家たちの利益を守る「守護者」として、自国で生産した高品質な生乳を世界へ輸出するという中核機能に立ち返る決断を下しました。これは単なる撤退ではなく、生き残りをかけた賢明な戦略的修正だと私は評価します。

フォンテラの乳製品は、ニュージーランドの輸出全体の2割を支える屋台骨です。この巨人の失速は国経済全体を揺るがしかねないため、今回の構造改革の成否には世界中が注目しています。かつての野心的な夢から目覚め、足元の土壌を再び踏み固めることができるのか。2019年9月27日現在、フォンテラは真の「グローバル・プレイヤー」への脱皮をかけた、正念場の真っ只中にいます。

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