中部電力グループが、社員の心身を支える「健康経営」を力強く加速させています。少子高齢化に伴う深刻な人手不足が社会問題となる中、同グループは従業員の健康維持を最優先の経営課題に据えました。ただ病気を防ぐだけでなく、企業としての魅力を高めることで優秀な人材を呼び込む狙いもあります。SNSでは「大企業がここまで本気で社員の健康に向き合うのは心強い」といった称賛の声も上がっているようです。
IT分野を担う中電シーティーアイ(CTI)では、2019年07月から禁煙治療への画期的な補助制度をスタートさせました。卒煙に成功した社員には治療費の半額、最大10,000円を支給するという太っ腹な仕組みです。同社は健康保険組合連合会愛知連合会から「健康宣言チャレンジ事業所」の認定を受けており、名実ともに社員の活力を重視する姿勢を鮮明に打ち出しています。こうした具体的な金銭支援は、社員のモチベーションに直結するでしょう。
さらに注目すべきは、若手社員の声をダイレクトに反映させたオフィス改革です。従来のリフレッシュルームは「テーブルが並んでいるだけで殺風景だった」と総務人事室の萩原千尋さんは振り返ります。しかし、2019年のリニューアルにより、靴を脱いでリラックスできる小上がりスペースが誕生しました。一人で集中したい時も、グループで談笑したい時も柔軟に使える温かい空間へと生まれ変わり、社員の憩いの場として定着しています。
専門家による食育セミナーと全社員対象の人間ドック
食生活の改善にも余念がありません。2019年07月にはカゴメから管理栄養士を招き、役員らを対象とした健康講習会を開催しました。管理栄養士とは、厚生労働大臣の免許を受け、病気の人や健康な人に専門的な栄養指導を行うプロフェッショナルです。講義では「愛知県の野菜摂取量は全国最下位」という衝撃の事実が明かされ、参加した幹部たちは危機感を募らせて真剣にメモを取っていました。実際に摂取量を測定する体験もあり、健康意識は一気に高まったようです。
一方、親会社の中部電力では2019年03月から、全社員が人間ドックを受診できる手厚い制度を導入しました。受診費用は全額会社が負担し、各職場に配置された保健師が結果に基づき全員と面談を行う徹底ぶりです。人間ドックとは、通常の健康診断よりも検査項目が多く、がんや生活習慣病の早期発見を目的とした精密検査を指します。プロの視点によるフォローアップ体制が整っている点は、社員にとって大きな安心材料といえます。
現場レベルでの「草の根」の活動も盛んです。エレベーター利用を控える運動や、朝礼を片足立ちで行うといったユニークな取り組みが各部署で展開されています。こうした地道な努力が結実し、2019年02月には経済産業省と東京証券取引所から、特に優れた健康経営を実践している企業として「健康経営銘柄」に選出されました。社員の健康を「コスト」ではなく、将来への「投資」と捉える同グループの姿勢は、現代企業の理想形ではないでしょうか。
私は、こうした企業の動きを非常にポジティブに捉えています。これからの時代、給与だけでなく「いかに社員を大切に扱ってくれるか」が就職・転職の決め手になるはずです。中電シーティーアイの内藤雄順社長が語るように、「人は資本」という考え方が浸透すれば、日本の労働環境はもっと明るくなるでしょう。今後も中部電力グループが、ワークスタイルの変革を通じてどのように進化していくのか、その動向から目が離せません。