近年、製造業の世界で最も注目されているキーワードの一つが「製造業IoT」ではないでしょうか。これは、IoT(アイ・オー・ティー:Internet of Things)、つまり「あらゆるモノがインターネットにつながる仕組み」を、特に工場や生産の現場で活用し、様々なデータを収集・解析するシステムを指す専門用語です。温度計や湿度計、電流計といった多種多様なセンサーを生産設備に取り付け、その稼働状況や環境変化をリアルタイムで分析するのです。この分析によって、設備の故障予測や最適な部品交換時期の割り出しなど、生産性の向上と効率化に大きく役立てられていると言えるでしょう。
この製造業IoTの波は、自社工場内にとどまらず、取引先の工場ともネットワークでつなぎ、サプライチェーン全体での生産管理に生かす取り組みも具体的に始まっています。こうした動きは、単なる技術革新に留まらず、製造業のあり方そのものを根底から変える可能性を秘めていると言っても過言ではありません。このデジタル化の流れは、国内外で大きな反響を呼んでおり、特にSNSでは「未来の工場はSFみたいだ」「データ活用で日本のモノづくりが変わる」といった期待の声が多く見受けられます。
製造業IoTの先進的な取り組みとして、世界で最も知られているのは、2011年にドイツが官民一体となって推進を始めた「インダストリー4.0」です。これは、第4次産業革命を目指す戦略的プロジェクトであり、製造業のデジタル化と高度な連携を意味します。このドイツの動きを追うように、中国も2015年に「中国製造2025」という国家戦略としてこの分野を推し進め始めました。国際的な競争が激化するなか、日本も2017年に「コネクテッド・インダストリーズ」構想を改めて打ち出し、先行するドイツを猛追している状況でございます。
この分野への参入企業は世界中で相次いでおり、ドイツのシーメンスやSAPといった巨大企業に加え、アメリカのゼネラル・エレクトリック(GE)も2012年に「インダストリアル・インターネット」という言葉で産業の高度化を提唱し、注目を集めました。そのなかで、GEは製造業IoTで先行していたものの、その後は事業を分社化するなど、この分野の競争の激しさを示しているのではないでしょうか。
一方、日本企業も負けていません。日立製作所は、製造業を含む社会インフラ全般のIoT事業において、2021年度に1兆6,000億円という売上高目標を公表し、その成長への強い意欲を示しています。また、工作機械大手のファナックは、NTTなどと共同開発したシステムを展開し、自社の生産設備を核としたIoT基盤を構築することで、顧客を囲い込む戦略を図っています。さらに三菱電機も、2019年5月にはIoT向けのソフトウェアを強化するためにアメリカの企業を買収するなど、技術力の底上げに余念がない様子です。
独シーメンスは140万超の機器やシステムをつなぐプラットフォーム「マインドスフィア」を展開しており、これは製造業IoTの巨大な事例と言えるでしょう。世界各国で製造業IoTへの投資と技術開発が進む中、日本が打ち出したコネクテッド・インダストリーズ構想が、国際的な競争の中でいかに独自の存在感を発揮し、日本のモノづくりの強みを最大限に引き出すことができるのか、その動向に強く期待したいと考えています。企業の垣根を越えたデータ連携が、未来の日本の産業競争力を決定づける鍵となるでしょう。