せっかく採用した期待の新人が、数年で職場を去ってしまう。そんな悩みを抱える企業は少なくありませんが、中堅倉庫会社の株式会社ダイワコーポレーション(東京都品川区)が打ち出した独自の施策が、いま大きな注目を集めています。同社は入社3年目までの若手社員に新卒採用業務の一部をあえて任せることで、驚くべき定着率の向上を実現しました。この取り組みは、単なる人手不足の解消ではなく、若手の「心のケア」に直結する画期的な試みと言えるでしょう。
2019年09月27日現在のデータによると、同社では2014年からこのプロジェクトを本格始動させました。その結果、採用業務に携わった2012年以降入社の新人47人のうち、3年未満の離職者はわずか8名に留まっています。離職率に換算すると約17%であり、施策導入前の2004年から2011年における約31%という数字と比較すれば、その効果は一目瞭然です。若手社員が自ら後輩を呼び込むという主体性が、組織への帰属意識を劇的に変えたのです。
部署の垣根を越えた「横断型プロジェクト」が孤独を癒やす
1951年に創業し、2019年09月時点で従業員数225人を擁する同社のような中堅企業では、配属先によっては同世代が周りにいないケースも珍しくありません。こうした環境では、若手が「自分だけが取り残されている」という疎外感を抱きやすく、それが離職の引き金になることが多いのです。そこで同社は、営業、総務、経理といった異なる部署から若手を集め、部門横断的なチームを編成しました。これが、彼らの孤独を解消する特効薬となりました。
2019年度には、23人の若手が通常業務の合間を縫って採用活動に励んでいます。彼らは週に1、2時間ほどを使い、母校のキャリアセンターを訪れて学生に自社をアピールしたり、会社説明会の司会や登壇をこなしたりしています。自分が会社の「顔」として振る舞う経験は、責任感を育むだけでなく、同期や先輩との強い絆を生むきっかけになります。SNS上でも「若手が楽しそうに働く姿は、学生にとっても最大の安心材料になる」と、この手法を称賛する声が上がっています。
「教える側」に回ることで深まる、自社への愛着と理解
私自身、この取り組みは非常に理にかなった素晴らしい戦略だと確信しています。人は誰かに何かを教えたり、魅力を伝えたりする立場になると、自然に対象への理解を深めようとするものです。学生の鋭い質問に答え、倉庫内を案内する中で、若手社員たちは自分たちの仕事の価値を再発見しているのでしょう。心理学的なアプローチで見ても、自己有用感(誰かの役に立っているという感覚)を高めることが、離職防止には何より重要です。
「自分たちが会社を創っている」という実感が持てる環境こそ、現代の若者が求めている職場環境ではないでしょうか。ダイワコーポレーションの挑戦は、採用コストを抑えるだけでなく、次世代のリーダーを育成する教育プログラムとしても機能しています。若手の離職に悩む多くの経営者にとって、彼らを「守る対象」としてだけではなく、会社の未来を担う「主役」として一歩前に踏み出させるこの決断は、非常に大きなヒントになるに違いありません。