2019年09月27日、フィリピンの首都マニラは早くも華やかな色彩に包まれています。カレンダーが9月に入った途端、街中のショッピングモールには巨大なクリスマスツリーがお目見えし、陽気なクリスマスソングが響き渡り始めました。この光景は、フィリピンの人々が自負する「世界で最も長いクリスマスシーズン」の幕開けを告げる象徴的なイベントと言えるでしょう。
フィリピンでは、英語表記の末尾に「ber」が付く9月(September)から12月(December)までの4カ月間を「バー・マンス(Ber Months)」と呼び、この期間すべてをクリスマスのお祝いに充てます。国民の9割以上がキリスト教徒であるという宗教的背景に加え、お祭り好きな国民性が相まって、他国では類を見ないほど長期にわたる祝祭期間が定着しているのです。
2019年09月17日、格安の雑貨店が並ぶマニラのディビソリア地区では、すでに多くの買い物客が熱気に包まれていました。飲食店を経営するプレスタン・アントニオさん(37歳)は、大量の電飾を手に「もうシーズンだからね。店に戻ってすぐに飾り付けをするよ」と笑顔で語ります。彼らにとって9月は、冬の準備ではなく、一年に一度の最も大切な祭典へのカウントダウンなのです。
SNS上でもこの驚きの早さは話題を呼んでいます。「まだ半袖の季節なのにクリスマスソングが流れる違和感がすごい」「フィリピン人のエネルギーは圧倒的」といった驚きの声が目立つ一方で、現地からは「この時期が一番ワクワクする」というポジティブな投稿が相次いでいます。早めに準備を整えることが、フィリピン流のスマートな過ごし方として定着しているようですね。
村議会議員のジュリー・タレンスさん(67歳)は、10月の給料日を待ってプレゼントを買い揃える計画を立てています。12月が近づくにつれて街は激しく混雑し、商品の価格も上昇する傾向にあるため、賢い消費者ほど「早買い・早保管」を徹底しているのが実情です。こうした計画的な消費行動が、長期にわたる商戦を下支えしている点は非常に興味深いと感じます。
GDPの7割を支える個人消費の爆発力
フィリピン最大の財閥、SMグループの「SMスーパーモールズ」は、クリスマスまで100日を切ったことを祝うイベントを大々的に開催しました。同社のスティーブン・タンCOOは、バー・マンスが始まると消費者の購買意欲が劇的に高まると期待を寄せています。驚くべきことに、12月の売上高は通常月の約3倍にまで跳ね上がるというデータもあり、その経済的インパクトは絶大です。
フィリピン経済において、個人消費は実質国内総生産(GDP)の約70%を占める重要な柱です。GDPとは、国内で一定期間内に生み出された付加価値の合計であり、国の経済規模を測る指標ですが、フィリピンではまさに「国民の買い物」が国を動かしていると言っても過言ではありません。2018年はインフレ(物価上昇)の影響で消費が停滞しましたが、2019年は物価が安定しています。
筆者の視点としては、この「バー・マンス」という文化は、単なる宗教行事を超えた最強の景気刺激策であると考えます。長期間にわたって消費マインドを高く維持させる仕組みは、世界中の小売業が手本にすべき活力に満ちています。2019年のクリスマス商戦が、減速気味だったフィリピン経済を再び力強く押し上げる起爆剤となるか、その行方に世界が注目しています。