AWS大規模障害から1カ月で見えたクラウドの光と影。企業のBCP対策は「脱・依存」が鍵に?

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2019年8月に発生した、世界最大のクラウドサービス「アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)」の国内データセンターにおける大規模な通信障害から、早くも1カ月が経過いたしました。私たちのビジネスや生活を支えるインフラとして急速に普及したクラウドですが、今回の騒動は「利便性の裏にあるリスク」を改めて突きつける形となっています。SNS上でも「仕事にならない」「クラウド一択は危険すぎる」といった悲鳴に近い声が相次ぎ、運用の在り方を根本から見直す動きが加速しているようです。

そもそもクラウドとは、従来のように自社で物理的な機械を持たず、インターネット越しにサーバーやデータベースなどのIT資産をレンタルする仕組みを指します。いわば、自ら一戸建てを建てる「オンプレミス(自社保有)」に対し、設備が整った「賃貸マンション」を借りるような手軽さが最大の魅力です。初期費用を抑えつつ、保守管理をプロに任せられるメリットを活かし、米ウーバーテクノロジーズのような急成長企業が次々と誕生しました。しかし、ひとたび管理会社でトラブルが起きれば、住人はなすすべがありません。

分散投資でも防げなかった不測の事態と運用の壁

今回の障害では、リスク分散のために複数の拠点を利用していた企業でさえ、サービス停止に追い込まれるケースが見受けられました。例えば会計ソフト大手のfreee(フリー)は、複数のデータセンターを併用していたものの、正常な拠点への切り替えがスムーズにいかず、一部の機能がストップしてしまいました。これは、単に「場所を分ける」だけでは不十分であり、非常時の切り替えフローがいかに複雑で困難であるかを物語っています。これを受け、同社はAWS以外の他社クラウドを併用する「マルチクラウド」の検討も視野に入れているそうです。

一方で、周辺機器大手のバッファローは、2020年3月20日までにAWSの複数拠点利用を徹底する方針を固めました。追加のコストを支払ってでもバックアップ拠点を確保し、1カ所のトラブルが全体に波及するのを防ぐ狙いです。しかし、ここで課題となるのが「ベンダーロックイン」と呼ばれる問題でしょう。これは、特定の業者の仕様に依存しすぎることで、他社への乗り換えが困難になる現象を指します。AWS独自の仕様に最適化されたシステムは、他社の環境では正しく動作しない恐れがあり、簡単には引越しができないのが実情です。

ITジャーナリズムの視点から言えば、今回のAWS障害は「クラウド神話」の終焉ではなく、真の成熟期への入り口だと私は考えます。これまで私たちは、クラウドなら「絶対安心で安上がり」という幻想を抱きすぎていたのかもしれません。これからは、事業継続計画(BCP)において、事業者が復旧してくれるのを待つだけでなく、自ら「最悪の事態」を想定した設計を組み込む覚悟が求められています。安価な賃貸マンションであっても、自分たちで防災袋を用意しておくのと同様の心構えが、現代の企業には不可欠なのです。

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