サウジ石油施設攻撃後の原油相場を予測!供給過剰懸念でWTI価格は50ドル台へ逆戻りか

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2019年09月14日に発生したサウジアラビアの石油施設への攻撃は、世界の石油供給の約5%を奪い去るという衝撃的なニュースとして駆け巡りました。これを受けて、ニューヨーク市場のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物価格は、2019年09月16日に1バレル62.90ドルまで急騰し、前日比で15%もの上昇を記録しています。SNS上でも「ガソリン代が跳ね上がるのではないか」といった不安の声が相次ぎ、中東の地政学リスクが改めて浮き彫りとなりました。

しかし、直後の熱狂とは裏腹に、足元の相場は意外にも冷静さを取り戻しつつあります。2019年09月17日には早くも50ドル台後半へと押し戻され、日本時間の2019年09月27日には56ドル台で推移するなど、下落基調が鮮明です。ここでいう「地政学リスク」とは、戦争やテロといった特定の地域の政治的な緊張が、経済全体に悪影響を及ぼす不確実性のことを指しますが、現在の市場はもはやその恐怖だけでは動いていないようです。

サウジアラビアの国営石油会社であるサウジアラムコは、2019年09月中に生産を正常化させると宣言しました。専門家の間では、これほどの大規模な被害をわずか1ヶ月で修復できるのか疑問視する声も根強いのが実情です。しかし、皮肉なことに復旧が遅れたとしても、市場には「供給過剰」という別の影が忍び寄っています。これは、石油を欲しがる需要に対して、市場に出回る供給量が上回ってしまい、価格が安くなる状態を意味します。

崩れる産油国の足並みと米国の増産攻勢

サウジの穴を埋めるため、クウェートなどの他の産油国が増産に踏み切れば、サウジ復旧後の市場はモノで溢れかえることになります。これまで石油輸出国機構(OPEC)は、価格維持のために「協調減産(各国が協力して生産を絞ること)」を行ってきましたが、一度増産に転じた国々が再びサウジの号令で減産に応じるかは不透明です。サウジの指導力が低下し、各国が自国の利益を優先し始めれば、需給バランスは一気に崩壊する恐れがあるでしょう。

さらに、米国の存在が供給過剰に拍車をかけています。米国では岩盤層から抽出される「シェールオイル」の増産が続いており、産地と港を結ぶ新しいパイプラインも稼働を始めたばかりです。サウジ産原油の代替として米国産の引き合いが強まれば、皮肉にも今回の攻撃が米国のシェア拡大を後押しする結果となります。世界的な景気減速による需要の冷え込みも重なり、2020年前半に向けて原油が余り倒すという予測が現実味を帯びてきました。

私自身の見解としては、今回の事件は原油価格の「天井」を露呈させたのではないかと考えています。あれほどの破壊的な攻撃があっても、価格が60ドル台前半で頭打ちになったという事実は、市場が供給不足よりも世界不況による需要減をより深刻に捉えている証拠です。投資家も強気な買いを控えており、今後は需給緩和のニュースが出るたびに、価格は50ドル台前半を目指して軟調に推移していく可能性が高いでしょう。

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