戦後の日本画壇を牽引した巨匠、東山魁夷(ひがしやま かいい)氏の記念碑的傑作、「唐招提寺御影堂障壁画」が、このたび北海道立近代美術館にて特別展として公開されています。仏教文化と日本美術史において非常に重要な位置を占めるこの大作、全68面が一同に会するまたとない機会であり、ファンならずとも必見の展示といえるでしょう。この壮大なプロジェクトは、唐招提寺の御影堂(みえいどう)に収めるために構想されたもので、完成まで実に10年という長い歳月が費やされました。この手間と情熱が込められた作品群の全貌に迫ることができるのは大変貴重なことなのです。
御影堂とは、奈良時代に唐招提寺を開いた鑑真和上(がんじんわじょう)の肖像を安置するための仏堂を指します。東山魁夷氏が手掛けた障壁画は、この御影堂を荘厳(しょうごん)に飾るためのもので、鑑真和上の徳を称え、その偉業をたたえる意味合いも含まれています。今回の展示では、その御影堂の内部が美術館内で再現され、実際に現地を訪れたかのような臨場感の中で作品を鑑賞できる工夫が凝らされているのです。
この大作は、大きく二つの制作時期に分けられ、それぞれ異なるテーマと画材が用いられているのが特徴です。第1期では、東山氏が得意とする色彩画によって日本の四季折々の山々と海の雄大な風景が描かれています。透明感あふれる色彩と、静謐な(せいひつな)雰囲気は、観る者の心を深く安らぎへと誘うことでしょう。一方で、第2期は水墨画で描かれており、テーマとして選ばれたのは、鑑真和上ゆかりの地である中国の風景です。墨の濃淡のみで表現された幽玄(ゆうげん)な世界は、また違った趣きをもって鑑賞者を魅了することに違いありません。
この展覧会は、単に完成した障壁画を並べて見せるだけではありません。制作過程を深く理解するためのスケッチや下図といった関連資料も多数紹介されています。これらの資料からは、東山魁夷氏がどれほど綿密に準備を進め、試行錯誤を重ねてこの歴史的傑作を生み出したのか、その尽きることのない探求心と情熱が伝わってくるかのようです。巨匠の芸術家としての苦悩と喜び、そして鑑真和上への深い敬意を感じ取ることができるでしょう。
この感動的な展覧会は、2019年7月28日(日)まで北海道立近代美術館にて開催されています。なお、作品保護の観点から一部に展示替えが行われる期間もありますので、鑑賞を予定されている方は事前にご確認いただくことをおすすめいたします。SNS上でも「荘厳な空間に感動した」「特に水墨画の迫力がすごかった」「日本画の美意識を改めて認識した」といった、多くの熱い反響や称賛の声が見受けられ、美術ファン以外の読者にも非常に注目されていることが伺えます。東山魁夷氏の画業の集大成ともいえるこの展覧会を、ぜひご自身の目でお確かめください。