2019年9月20日に開幕し、日本中が熱狂の渦に包まれているラグビーワールドカップ。この歴史的なビッグイベントを機に、大阪の伝統的な「銭湯」を世界へ発信するユニークなプロジェクトが始動しました。大阪市内の銭湯経営者たちが、海外からの観戦客に向けて日本の裸の付き合い、いわゆる「銭湯文化」を肌で感じてもらうための体験型観光をプロデュースしているのです。
プロジェクトの皮切りとして、2019年10月4日には2カ所の銭湯を舞台にした特別な体験コースが実施されます。単に入浴するだけでなく、なんと「英語落語」を鑑賞できるプランなど、3つの魅力的なコースが用意されました。日本独自のユーモアを英語で楽しんだ後に、広々とした湯船でリラックスする体験は、外国人観光客にとって忘れられない旅の1ページになることでしょう。
今回の取り組みで注目すべきは、環境への配慮と地域活性化の融合です。大阪府森林組合の協力により、大阪産のヒノキの間伐材(森の健やかな成長のために間引かれた木材)で作られた特製の手形が参加者に配られます。この手形は周辺の飲食店などで提示すると割引サービスが受けられる仕組みになっており、銭湯を起点に街全体を回遊してもらう素晴らしいアイデアだと言えます。SNSでは「銭湯で落語なんて最高すぎる」「木の香りがする手形はお土産にもぴったり」といった期待の声が寄せられています。
「銭湯ワンダーランド」が描く2021年への未来図
このプロジェクトは一時的なイベントに留まりません。主催する大阪府公衆浴場業生活衛生同業組合城東鶴見支部などは、将来的に「一般社団法人銭湯ワンダーランド」を設立する構想を描いています。スマートフォンの事前予約決済システムを構築し、2021年に開催予定の「ワールドマスターズゲームズ2021関西」を見据え、銭湯を拠点とした広域観光のハブ(中心地)に成長させる計画なのです。
開催地の一つである「ユートピア白玉温泉」の北出守社長によれば、大阪府内の銭湯はピーク時の5分の1ほどに減少してしまいました。しかし、私はこの現状を悲観するのではなく、銭湯を「日本文化のショールーム」として再定義する今回の試みに大きな可能性を感じています。民泊施設と連携し、地域コミュニティの核として銭湯が復活することは、日本の観光立国化において非常に重要な一歩となるはずです。
古き良き日本の日常が、ラグビーという世界共通の情熱を通じてアップデートされていく様子は、まさに新時代の観光スタイルと言えるでしょう。2019年10月4日のイベントを皮切りに、大阪の銭湯が世界中の人々を癒やし、つなぐ聖地となる日が今から楽しみでなりません。地域の伝統を守りながら、テクノロジーと遊び心を取り入れる姿勢こそ、これからの日本に必要なエネルギーではないでしょうか。