アスベスト(石綿)被害に苦しむ患者の方々とそのご家族にとって、司法がまた一歩、実質的な救済へと大きく舵を切りました。2019年09月27日、福岡高等裁判所は、建材工場で働いたことで肺がんを患った70代の男性に対し、国が支払うべき損害賠償金の利息にあたる「遅延損害金」の起算点について、非常に重要な判断を下したのです。
この裁判の最大の争点は、遅延損害金をいつの時点から計算するかという点にありました。遅延損害金とは、金銭の支払いが遅れたことに対するペナルティのような性質を持つ利息のことで、法律の世界では損害が発生した瞬間からカウントされるのが原則です。今回の判決では、一審の福岡地方裁判所小倉支部の判断を支持し、改めてその起算点を認める形となりました。
「診断時」か「労災認定時」か、数年の差がもたらす重み
国側はこれまで、公的な手続きによって病気が認められた「労災認定の日」を起点にすべきだと主張してきました。しかし、西井和徒裁判長は、医師によって肺がんと確定診断された2008年11月にこそ損害が発生したとみなすのが妥当であるとして、国の訴えを退けたのです。この判断により、2010年02月の労災認定を待つことなく、より早い段階からの賠償が認められました。
SNS上ではこのニュースに対し、「病に苦しみ始めた瞬間から救済されるべきだ」「事務的な手続きの日付を優先するのはあまりに非情」といった声が数多く寄せられています。今回の判決は、単なる金額の積み増し以上の意味を持っており、長年アスベスト被害に翻弄されてきた労働者の実態に、司法が真摯に寄り添った結果であると私は強く感じています。
判決後、原告の男性は「国は無益な争いを続けず、高齢化した患者のために判決を受け止めてほしい」と切実に訴えました。同様の判断は、2019年09月中に神戸地裁や広島地裁でも相次いで示されており、今後は全国の同種訴訟においても「診断時」を起算点とする流れが決定づけられるでしょう。一刻も早い全面的な解決が望まれる、極めて意義深い司法の決断といえます。