2019年09月29日の穏やかな日曜日の朝、日本経済新聞の別刷り「NIKKEI The STYLE」が、私たちの知的好奇心を心地よく揺さぶってくれます。今回掲載されたクロスワードパズルは、歴史、文学、映画、そして最新の科学までを網羅した、まさに大人のための教養の宝庫と言えるでしょう。週末のひととき、コーヒーを片手にこうした難問に挑むのは、日常の喧騒を忘れさせてくれる至高の贅沢といえるのではないでしょうか。
SNS上では「今週のカギは渋すぎる!」「中嶋常幸選手の悲劇を思い出した」といった声が上がっており、世代を超えた盛り上がりを見せています。タテのカギには、クエンティン・タランティーノ監督の傑作映画『キル・ビル』や、聖書に登場する死の象徴、さらには大河ドラマ『炎立つ』など、幅広いジャンルが顔を揃えました。これらを解き進める過程で、私たちは自身の知識の引き出しを再確認し、新たな発見に出会うことができるのです。
特に注目したいのは、14番の「トミーズ・バンカー」です。これは1978年の全英オープンにおいて、日本人ゴルファーの中嶋常幸選手が脱出に失敗し、優勝争いから脱落した悲劇の舞台として知られています。また、大般若長光で知られる「備前長船(びぜんおさふね)」の刀工についての出題もあり、日本の伝統工芸への敬意も感じられます。こうした専門的な知識がパズルのピースとして組み込まれている点に、本誌ならではの知性を感じずにはいられません。
歴史と科学の交差点、2019年の今を映し出すカギの数々
ヨコのカギに目を向けると、2019年5月に惜しまれつつ世を去った米国の物理学者マレー・ゲルマン氏にちなんだ「クォーク」の命名に関する問いが含まれています。現代物理学の基礎を築いた偉人の功績を、パズルを通じて追悼する構成には編集者の深い意図が読み取れます。専門用語である「クォーク」とは、物質を構成する最も基本的な単位である素粒子の一つであり、私たちの世界の成り立ちを理解する上で欠かせない概念です。
一方で、坂本龍馬が暗殺直前に注文したという「軍鶏(しゃも)鍋」のような、歴史のロマンを感じさせる設問も用意されています。幕末の志士が愛した味に思いを馳せながら、古代の間諜(スパイ)を指す「伺見(うかみ)」という言葉を導き出す時間は、まさに時空を超えた旅のようです。こうした古今東西の知識が交差する構成こそが、多くの読者を虜にする「NIKKEI The STYLE」の魅力だと私は確信しています。
エスペラント語を創案したザメンホフや、トルコの古都アンティオキアなど、世界史の知識も試されます。単なる暇つぶしではなく、解き終えた後に世界が少しだけ広く見えるような、そんな知的な体験がここに凝縮されています。まだ手をつけていない方は、ぜひこの奥深いパズルの世界に足を踏み入れてみてください。きっと、2019年の秋を彩る忘れられない知の探求になるはずですから。